ゲストハウス タイ

タイのゲストハウス。その実態と醍醐味とは?

投稿日:2014年10月23日 更新日:

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長期の一人旅は、安宿の存在なしにはうまく成り立たない。当然ながら前回のタイ放浪中の住処も、そのほとんどが安価なゲストハウスであった。言い方を変えればそれは、タイ(南部以外)の安宿を、流れ流れて、点々と廻った旅であったともいえる。

私にとって「安宿に泊る」とは一体どのようなことなのだろう。もちろんそれは、長旅を続けるための限られた選択肢の一つであることに間違い無いのだが、多くの時間を過ごすことになる我が「寝床」について、その実態や思い出、醍醐味などを自分なりにまとめてみようと思う。ちなみにここでいう安宿とは、100~200バーツ程度の最も安い層の宿である。

 

「取りあえず寝れればいい」という考えの自分にはちょうどいい環境

 

清潔、安心、質のいいサービス。当然、私はそのような快適さを旅に求めているわけではない。特にどうしても節約が必要な長期の旅となるとなお更そんなことはどうでもいい。取りあえず「寝る場所」があればそれで満足だから、ときに不衛生、ときにちょっと物騒で、いつも最低限のサービスしか期待できない安宿という環境はとても私の性に合っているといえる。

 

冷たいシャワー

 

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タイの安宿のシャワーからお湯がでることはほとんど皆無に等しい。温度調節器がついていたとしても恰好だけで実際は調節が効かないこともザラである。共同シャワーの場合も状況は同じようなものだ。

時には、「シャワー」ではなく水の張った大きなバケツが置いてあることだってある。洗面器で掬って水を浴びると言うなんとも原始的なスタイルを貫く安宿もごく稀に存在する。そんな時は、がっかりせずに異文化を存分に堪能してほしい。

 

冷たいシャワーでは疲れが取れない

 

タイは熱帯の高温多湿。タイ人にとって冷たいシャワーは日常のようである。しかし日本人の私はどんなに暑かろうと夜は熱いシャワーを浴びたいし、できれば湯船にざぶんとつかりたいというのが正直なところ。だから、この冷たいシャワーに体が慣れるまでには結構時間がかかった。

旅の間は毎日よく歩きまわったため、体はそれなりに疲労するわけだが、冷たいシャワーでは疲れを癒すことができず、その分睡眠に頼るため朝起きるのがどうしても遅くなってしまう日が続いた。しかし2週間ほど経つと体が適応してきたのか、短い睡眠時間でも回復できるようになった。私は一度も利用しなかったが、タイでは盛んなマッサージを利用することでこの疲れを癒すのだろう。

 

衛生的とは言えない水回りも

 

安宿を点々としていると、時には水回りの不衛生な部屋に当たることもある。排水溝にゴミや髪が詰まり気味で水が上手く流れなかったりすることがある。例えば冷房の効きすぎた長距離バスに乗ったあとに免疫が落ちている状態の体で、水回りに雑菌が繁殖した部屋に泊ると当然風邪をひく確率は高まる。一年に一度ひくかひかないかという体の丈夫な私でも、まんまとこれにやられてしまい、2,3日の間ずっと風邪気味で過ごすはめになった。原因が水回りの不衛生さにあることにやっと気がついた鈍感な私は、軽く掃除したあと換気に努めた結果、すぐに体調は完治ったのだが、、、。ただの風邪とはいえ、異国の地で免疫を落してしまうのは不安なものだし、更なる疾患に繋がりやすいので注意したいものだ。

共同シャワー、トイレとなると、多勢で使用する分余計に不衛生になりがちだ。たとえば共同トイレの便器に大便が流されずに放置されていたりすることもよくある。その階には私の他にバングラディシュからの留学生の一群しかいなかったたので犯人は間違いなく彼らだろうが、あれにはさすがに怒りが込み上げてきたものだ。

その留学生らのトイレ周りの使い方が乱雑なためか、共同浴室の空気は時々我慢できないほど汚染されていた。空気が黄ばんで見えるほどの異臭が漂い、さすがに身の危険を感じた私はすぐにドアを閉めて避難し、掃除係の清掃が入るのを待って綺麗になったあとに改めて体を洗ったものだ。ただしこのようなことはごく稀であり、タイの場合はほとんどの安宿が最低レベルの衛星環境を整えていることは付け加えておく。

 

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昼なのに日の当たらない窓。 安宿ならばこれも仕方がない。

 

ベッドの上の蟻と壁にへばりつくヤモリ

 

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安宿の部屋の水回りで動き回るゴキブリ。ベッドの上を歩き回る蟻。彼らとの遭遇など日常茶飯事だ。しかし心配は不要。私が知る限り南国のゴキブリは暑さのせいか動きが鈍く敏速な日本のものほどの不気味さはないし、部屋で見る蟻はとても小さいもので、あなたが寝ている間に噛みついてきたり、耳に侵入して鼓膜を食いちぎったりす獰猛さはない。

灯を消していざ就寝を試みるとうるさく飛び回る蚊に眠りを妨げられるのも毎晩のこと。私も結構な回数を刺されて大量の血をただで分け与えてしまったものだ。眠りを妨げるあの耳障りな音と血液の無駄な流出を回避するためにも虫よけスプレーや蚊よけローションなどできちんと対応したい。マラリアやデング熱などにかからないためにも、感染源である蚊にはむやみに刺されないように注意したい。特にタイのミャンマーやカンボジアとの国境沿いの山岳地帯などではマラリアに感染しやすいという情報もあるのでそちらに滞在予定のある方は要注意だ。

私は経験がないのだが、ごくまれに南京虫も登場するらしい。これに刺されるとしばらくのあいだ激しい痒みと共に不快な旅路を行かなくてはならないだろう。

東北部のメコン川を望むラオスとの国境沿いの街、コーンケーンの安宿に宿泊したときは、なんだか体がモゾモゾして寝付くまで苦労した。眠気に支配された体を無理やり起こし、何度も灯をつけて布団と体を確認するがなにもいない、しかしまた眠りにつこうとするとやはり体の至る個所がもぞもぞむずむずと痒い痒い。寝ぼけ眼ですね毛の間に目を凝らすものの、肉眼では犯人の姿を捉えることはできなのだが、確実にオレの体を何かが這いずっている。あれはおそらくダニだったのだと推測する。きっとしばらくの間手入れのされていない布団だったのだろう。

 

早いとこチンチョくん(ヤモリ)との暮らしに慣れた方がいい

 

それから、部屋の壁に10センチほどのヤモリがへばりついていることもしばしば。とくに夜になるとどこからともなく現れてくるきらいがある。このヤモリはバンコクの様な大都会から山奥の村に至るまでタイ全土に生息しているようで、その名をチンチョという。おそらくチンチョくんは東南アジア全土に生息しているのではないだろうか?

街を歩いているときに「ケケケケケケケッ、トットー!!クェックェー!!!」という小人の嘲笑のような鳴き声が聞こえたら、それは間違いなくこのチンチョくんだ。初めのうち、私は迂闊にも(タイのカエルは妙な鳴き方をするんだなぁ)と勘違いしていたのだが、旅を続けるうちにこれがヤモリの鳴き声であることにやっと気がついた。

就寝時に壁や天井にチンチョたちがへばりついている。初めは戸惑いも不快感もあったのだが、いつのまにか慣れてしまったし、そうでなければ絶対にやってはいけない。もちろん攻撃はしてこないし、部屋の羽虫を食べてくれるという役割も果たしてくれう。ピンクの壁なんかに薄緑のチンチョがにへばりついていたりすると、なかなかオシャレなコントラストでむしろ目を楽しませてくれることもある。

彼らは電灯に群がる羽虫を食べるのが日課のようで、街灯の傍にしろレストランの灯の傍にしろ、とにかく至る所にへばりついている。タイの長旅をしているとあらゆるシチュエーションで目撃することになり、ふとした時に目についたりすると、なんだか妙な親近感が湧いてきさえする。「ふっ、またお前か、、、」といった具合だ。彼らの捕食の様子をじっと観察しているのもなかなか面白いくてタイならではの暇つぶしの仕方でもある。

チンチョくんが七回連続で鳴いたら幸運が訪れるという言い伝えもある。タイやその周辺国を訪れるさいは、チンチョの嘲笑に耳を傾けてみてはいかがだろう。思わぬ幸運が舞い込んでくるかもしれない。

ケケケケケケケッ。

 

 

・やはり七回連続で鳴く瞬間に出会うのは難しそうだ

・チンチョの捕食映像を発見。幻想的な音楽と共に

ああ、なんて懐かしい光景、鳴き声なのだろう。 

 

 

 

安宿のスタッフたち

 

安宿のスタッフたちに質の高いサービスを求めるのは間違いだとはわかっているが、宿によってはもう少しやりようがあるのではと思ってしまう事もある。スリン県の駅前のとある安宿に泊った時のこと。部屋にセットしてあったグラスが手垢や油でくすんみ汚れていたので、取り替えてもらおうとフロントまで持っていった。その時いた男の受付にグラスを見せながら旨を伝えると、彼はまじまじとグラスの汚れを見つめてから大したことないと判断したようで「マイペンライ」と面倒くさそうに断わった。私は少々不快感を抱いたが、ここではこの程度の汚れでフロントに交換を要求する自分の方が方がむしろ間違っていたのかもしれないと思いなおし、だまって部屋までもどり自分の手でグラスをごしごし洗ったのであった。安宿だとはいえ、少々のサービスを要求すること自体は個々の自由ではある。大切なのは、その要求がかなわなかった時に、潔くあきらめるという精神だろう。タイの安宿に多くを期待する様はともすると滑稽である。

 

 安宿の一つの醍醐味として、宿のスタッフとの距離が近いということがある。これはもちろん、良くも悪くも、である。気が合わなければ距離を置いて付き合えばいいし、馬が合えば一定の警戒を保ちつつも、とことん親しくなればいいだけの話だ。

バンコク、ルンピニーの安宿では、オーナーの女性と親しくなった結果、部屋の料金を50バーツほどまけてもらうことがあった。チェンマイの安宿でも同じようなことがあり、スタッフに混ざり無料で夕御飯を提供してくれたり、靴が壊れたら露店の修理屋へ持って行ってくれたり、私がなにか書きものをしやすいように部屋に机を用意してくれたりと様々な親切を受けた。

ウドンタニーの安宿では、オーナーの夫婦とたいぶ親しくなることができた。自家用車で行きたい場所へ連れて行ってくれたり、親戚のパーティーに招待されてご馳走を振る舞われたり。

長期の旅で各地を回るのなら、それぞれの街に1~2週間ほど滞在することも多いだろう。旅の目的にもよるけれど、なるべく現地に溶け込んで、住むように旅を続けた方が、安宿や一人旅の醍醐味を味わえるだろうし、短期的しろ何かトラブルに巻き込まれた時に味方になってくれる人間や関係性を築いておいた方が都合がよいだろう。むろん、近づきすぎたがゆえに巻き込まれることになるトラブルもあるわけだから、その辺りのさじ加減も旅をしながら身につけていきたい。

 

 

ユニークな宿泊者たち

 

世界中のバックパッカー、ヒッピー、外こもりの若者、株やFXで暮らす人、グラフィティーアーティスト、タイで働く外国人、売春婦、退職金/年金暮らしのおじさん、売れない詩人、風俗目的、留学生、旅行中の老夫婦、休暇中のビジネスマン、ゲイのカップル、出稼ぎ、などなど。いずれもタイの安宿やその近辺でよく見かける人間たちの種類である。

金銭的にあまり余裕のない層や、好むと好まざるとにかかわらず、なんだかの理由で長期滞在する必要がある人達が多いようである。ちなみに私はどの部類に属するのかというと、「世界各国のバックパッカー」だろう。

 

 

マリファナの香り

 

宿泊客の中には、マリファナや薬に手を染めるものもいるようだったが、そういう連中とはなるべく付き合わないようにした。マリファナやそれを吸う人間に対する偏見は皆無だが、私は興味がない。隣の部屋のシリア人がやっているようだったが、誘われることもなく、ごく自然に親しくしていた。

余計なトラブルに巻き込まれるのは御免だ。タイにおいてマリファナは違法であり、密告奨励制度なるものの存在もよく耳にする。マリファナに近づいたがために、運悪く人違いで逮捕されてはたまらん、といった思考が働き余計に警戒心を煽る。

 

カオサンローどなどを歩いていると、道の脇に立つ男がよく「ガンジャ、ガンジャ」と誘ってくる。俺の人生を潰す気か。もし吸いたくなったらカナダやオランダへ行って思う存分やるので心配無用。ちなみにタイ北部の少数民族が暮らす山岳地帯の村へ滞在した時は、夜になると毎晩怪しい煙を吸って目をとろんとさせている現地の人たちがたくさんいた。それが彼らの日常なのだ。山奥だから、警察の見回りも年に数回ほどしかないらしい。もちろん私はやらなかったが、囲炉裏の煙と怪しい煙が混ざり合い、それを嗅いでしまったためかかなり具合がわるくなった夜もあった。横になったまま、民家の板の隙間から必死に外気を吸いこみながら眠りについたものだ。やはり私の体にそのような煙はあまり向いていないのかもしれない。

 

盗難被害

 

私は安宿滞在中に盗難に遭うことはなかったのだが、そういった被害が多発している宿もあるようだ。タイの場合は、外部の人間や宿のスタッフによる犯行ではなく、宿泊者による盗難事件が多いという印象を受けた。

 

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これは、とあるゲストハウスの壁で見つけた張り紙である。内容を簡単に説明すると「警察から、盗難は外部の人間ではなく宿泊者によってなされている、という警告があった」「部屋に貴重品を残さないこと。部屋を離れる時は必ず鍵をかけること」などのオーナーからの注意書きのようだ。

自前の鍵を用意して、怪しげな宿では二重のロックをするのもよくある盗難防止策である。

 

 

Wifi環境はたいてい整っている

 

地方のうらぶれた安宿でもない限り、大抵の場合wifi環境が整っている。ほとんどの安宿は無料で利用できるのだが、ごくまれに有料の場合がある。宿のパソコンには利用料がかかるのが普通だ。

 

 

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微妙な高さにプラグが設置されていたりして、ipadの充電にも一苦労。ジーンズをフックに掛けてそこにipadを乗せている。このように部屋の作りがどうも合理的じゃないと感じることは多々ある。

 

 

 

タイの安宿から世界を透視する

 

安宿特有の快適とは言い難い環境。しかし忘れてはならない魅力もある。それは多様な目的や事情を抱えた人間と彼らの固有の生き方を垣間見る貴重な機会を用意してくれる点ではないだろうか。そして、そこで出会う人間の一つ一つの話に耳を傾けていけば、その先には、日本を含めた世界の「今」の姿がおぼろげながら浮かび上がってくるのではないだろうか。もちろんそれは安宿に限ったことではないかもしれない。ただ、「一定の安宿宿泊層」が存在するのだとすれば、その層を媒介にして確実に見えてくる世界があるのではないかということだ。タイの安宿から世界の「今」が見える、といったら少し大げさだろうか。

そしてなによりも「見よう」「知ろう」としなければせっかくの旅人との会話も虚しく実のないもので終わってしまうだろう。もちろん、弛まぬ好奇心を持ち、最低限の知識を備えておくことも旅人が果たすべき条件かもしれない。人との交流を通して、自分の中の「世界の小窓」が開いていく感覚を味わえるのも旅の醍醐味の一つだとすると、その機会を与えてくれる湿った安宿もあながち捨てたものではない。

 

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こんな錆ついたトタン路地の奥にもやはり、湿った安宿がひっそり隠れている。まだ見ぬ出会いを求めて、私は先細る路地の呼び掛けに答え、奥へ奥へと吸い込まれて行くのである。

 

綺麗でオシャレな旅路にあきたら、おんぼろゲストハウスで新鮮なアクセントを。あなただけの安宿を探してみてはどうだろう?

 

ケケケケケケケッ、トックトー!

 

タイのゲストハウス。ルンピニーのおんぼろ安宿に9日間滞在するもお薦めです。 

 

-ゲストハウス, タイ

執筆者:


  1. ワイ より:

    はじめまして
    安宿をさがしてたら偶然ここにたどり着きました。宮城県南在住、東京からUターンで旅好きな所が共通するかと思います。3ヶ月の予定で日本を出国、ビザ無し訪泰でそろそろ一ヶ月、これからラオスに移動する所です。自分はブログはしてないので読むだけになりますが、とりあえず宜しくです。1町7村合併の白石在住(当然7村側)なので自分も僻村を名乗る資格ありかも。

    • hekison30 より:

      はじめまして。コメントありがとうございます。
      白石の方なのですね。残念ながら私の方は事情があり土地名は出せませんが、それなりに近い場所に住んでおります。

      もうラオスに移動されたのでしょうか。私はまだラオスには足を運んだことがありませんので少々羨ましいです。
      三カ月と言うことでまだまだお楽しみはこれからだと思いますが、くれぐれも気を付けて安全で楽しい旅を!

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