バンコクから深夜バスで約10時間、飛行機なら約1時間。
タイの中でも古都として異彩を放つチェンマイは、北部最大の歴史深い街である。
かつてこの都は、タイ北部一帯を統治したランナー王国の首都として栄えた。「旧市街」は四方をお堀に囲まれており、その東西南北にはいまだに城壁や城門の一部が残っている。
旧市街にはワット・プラシンを始めとする格式高い仏教寺院を抱えつつ、ゲストハウスやホテル、レストランにスパなどが無数に乱立する。大通りからふと顔を上げれば、古都の街並みの向こうに山の稜線を伺うことができ、そのあたりには一種独特の風情がある。
伝統工芸の盛んな土壌、そこへ外国人から山岳少数民族という幅広い人種と文化の坩堝が生まれたためか、いまやタイ芸術の拠点とも言われるチェンマイを歩いてみれば、古都の随所にアートの香りも嗅ぎ取ることができる。
チャンマイは北部の基点でもある。お隣ミャンマーへ抜ける際に通過するであろうチェンライ、また山間のユートピア「パーイ」行きのバスもここから出ている。
車やバイクの濁流、迷路のように張り巡らされた無数の路地、相変わらず怒涛の雨季のスコール。バンコクに比べ澄んだ空気、涼しい風。多少物価も安く、日本に似た四季もあるとくれば日本人の老後移住先として人気があるのも頷ける。
人の物腰にもどこか柔らかさが残っている、安いローカル食堂もあり、お約束程度の夜遊びスポットもある。郊外まで足を伸ばせば、エレファントキャンプで象に跨り、首長族の村も覗ける。
もしタイに住めるなら、チェンマイは確実に上位候補になる。
チェンマイ観光は大きく3つのエリアに分けられる
チェンマイの観光を考える場合、旧市街とその周辺に広がる新市街、さらに郊外の3つのエリアに大きく分けることができる。
旧市街の主な寺院観光だけなら一日で十分に見て周れるだろう。チャイナタウンなどその他の新市街エリアを含め、郊外の首長族の村やエレファントキャンプまで網羅するにしても二泊三日ほどあれば満足できると思う。
もちろん、それ以上の日数が組めるなら、チャイナタウンや夜遊びも含めていくらでも細かく見て周ることができる。
現地オプショナルツアー
旅慣れていない方や余計な心配をせずにさくっと観光だけ楽しみたい方には現地オプショナルツアーがおすすめだ。
チェンマイ旧市街の寺院と郊外のエレファントキャンプ、首長族の村の観光などがセットになっているツアーもあるので、興味のある方はぜひチェックしてみて欲しい。
チェンマイ旧市街マップ
バスターミナル2から旧市街へ
チェンマイのバスターミナルは旧市街の北に位置するターミナル1と東(北東)に構えるターミナル2がある。
バンコクから長距離バスでチェンマイにやってくる場合、バスは「アーケード」と呼ばれるターミナル2に到着することになる。
ターミナル2から旧市街までは約3キロの距離があり、バスやソンテオを使って移動する必要がある。
バスがおすすめ
ターミナル2から旧市街までの移動手段の相場を値段の安い方から並べると、バス15バーツ、モーターサイ(バイクタクシー)40~50バーツ~、トゥクトゥク60~80バーツ、ソンテオ(乗り合いバン)80バーツ~、タクシー120~150バーツと言った具合になる。
もちろん、交渉次第で値段は変動する。
おすすめはやはり、最も安いバスだ。
この白いバスはB1とB2の二種類あり、それぞれルートが異なる。
B1はチェンマイ動物園行き、B2はチェンマイ国際空港行きとなっており、旧市街へ行くにはB2に乗ればよい。下車は、旧市街の基点となるターペー門前がおすすめだ。
ちなみに、帰りの際、旧市街からバスターミナルへの移動についてだが、紹介したバスが逆方向でも走っているのか調べ損ねたので不明、そのためここではソンテオの利用を推奨しておくことにする。
ちなみに、鉄道でチェンマイ入りする場合、駅は新市街の東になる。ターペー門へはチャルン・ムアン通りからソンテオが安い。
チェンマイ国際空港から旧市街へ向かう場合、空港は旧市街の南西、移動はエアポートタクシーを利用することになる。
チェンマイ旧市街の「ターペー門」は基点に。主な仏教寺院を観光する。
旧市街の東側に位置するターペー門は一つの基点になる。
漠然と旧市街へ入るならこの辺りで下車すればよい。ちなみに、ターペー門から東へ伸びるターペー通りには両替所も多いので要チェック。
写真の様に、門の周辺は広場になっている。
万国共通、公園や広場には多様な人々が集う。門の前で記念撮影する観光客、ハトに餌付けし戯れる地元民、しれっと売り物を広げる露店商、ガラクタで拵えたドラムで驚異の打音を響かせる音楽家。
はたまた、ハグの相手を求め三輪車で徘徊する清潔感のない”Free Hug”おじさんとも目が合いドキリ、抱き合うのか否かの決断を迫られたり。
寺院巡りはレンタル自転車で十分
四角形を成す旧市街の一辺は約1,5~1, 8キロほど。ワット・プラシンを含めて主な寺院はその中に点在している。
体力に自信があれば徒歩で見て周るのも悪くないが、レンタルバイクやレンタル自転車を足に移動する旅行者は多く見受けられた。
むろん、トゥクトゥクやソンテオを使うのもありだ。いちいち捕まえる手間を考えると、値段交渉のもとで一日や半日のチャーター利用が無難かもしれない。
レンタル料金の相場は、
レンタルバイク:24時間200~300バーツ
レンタル自転車:24時間50~100バーツ
といったところ。
その他にデポジットやパスポートもしくはコピーの預けが必要になる。
バイクをレンタルする場合の注意点をさらりと上げておく。基本的に国際免許証の携帯は必須だが、レンタルする際に提示を求められることはない。したがって、不携帯でも借りることが出来るが、事故に遭った場合は当然不利な立場になる。
また、バイク故障時の支払い云々や返却時にもともとあった傷などに言いがかりをつけられないようにレンタル時に状態を確認しておくなどしておいた方がよい。
海外でバイクに乗ることに抵抗のある方は自転車でしこしこと周ったほうが無難だろう。特にタイは世界有数の交通死亡事故大国でもあるためなおさらだ。
チェンマイ市内を走る赤いソンテオの相場は一律20~30バーツほど。
乗り方だが、街中で捕まえる場合、路肩で手を挙げて乗りたい意思を告げ、停車したら乗り合い席に乗り込む。満席なら、助手席に乗せられることもある。
ブザーボタンが付いているはずなので、下車したい場所に来たらブザーを押して降りたい意思を伝える。降りたら運転席側へと回り、窓から料金を支払う。
複数でチャーターしたりルート外の場所へ行ってもらう場合を除き、料金は一律。
こちらから料金を尋ねた場合、根性の曲がったドライバーならしれっとした顔で「70バーツ」などとぼったくろうとするケースもある。私も過去に何度かぼられた経験がある。
したがって、目当ての場所で降りたら黙ってしれっと20バーツほど支払えばよい。この時30バーツと言われればそれも相場内なのでぼったくりではないと考えてよいだろう。
トゥクトゥクの市内移動なら30~50バーツほどが相場だろうか。旅行者からぼったくろうとするドライバーも多いため、あまりに高いと感じた場合は値下げ交渉が必要だろう。
主要な仏教寺院
旧市街の見どころはなんといっても仏教寺院。ということで、主要な寺院を紹介して行くことにする。
ワット・チェンマン
1296年、ラーンナー・タイ王国を興したメンラーイ王がチェンマイに都を造った際に建てられ寺院。
かつては宮殿でもあったという。
旧市街東のターペー門からだと自転車で約5分ほど。
おそらくどの寺院もそうだが、本堂は無料で開放されている。
小鳥売り。4羽、8羽と小鳥が入った籠が80バーツほどで売られている。”Good luck for you”、その場で籠を開け小鳥を空に放してやる。これで幸運が訪れるのだとか、、、。
ワット・チェーディー・ルアン
ターペー門からだと自転車で5分ほど。
旧市街のほぼ中央に位置するワット・チェーディー・ルアンは、チェンマイの寺院の中でも随一の格式を誇る。
大蛇と孔雀の装飾を入り口に構えた寺院、そのお堂内はため息が出るほど気品に溢れていた。
寺院の裏側には頂の欠けた巨大な仏塔(チェーディー)がある。この仏塔は1411年に建てられたもので、1545年の地震で壊れる以前は86メートルもの高さを誇っていた。
仏塔は1992年にユネスコと日本政府の援助によって修復された。
巨大なチェーディー。
地震で壊れたという仏塔。
ここチャンマイやチェンライなどのタイ北部やミャンマー国境周辺ではたびたび地震が起きている。
社会も人も地震慣れしている日本でならともかく、タイで大きな地震には遭いたくない。
仏像の輝きも去ることながら、色濃く上品な天井のデザインには強く惹かれるものがある。
荘厳さと格式に満ちたお堂内は静かで神聖さが漂う。
ここで紹介したワット・チェンマンとワット・チェーディー・ルアン、それに旧市街の西側に位置するワット・プラシンを加え、この3つがチェンマイ旧市街の主要寺院となる。
ちなみにワット・プラシンにも訪れたのだが、カメラの充電が切れてしまい写真に収めることはできなかった。現地でのお楽しみと言うことで、ここでは紹介せずということに。
この他にも、旧市街の内と外に小さな寺院が点在している。
私の場合はやや食傷気味、主要寺院を巡れば十分といった具合だ。それほど興味のない方にはだんだんどの寺院も同じに見えてくるというのが悲しい現実だろう。
逆に、寺院やその歴史に興味をお持ちの方は納得いくまで巡ってみて欲しい。これほど楽しい街はないはずだ。
3人の王像
チェンマイ市芸術文化センター前の広場でこれ見よがしに握手する三人の像。
彼らはチェンマイ創設に縁のある王たち、チェンマイ創始者とその協力者なのだという。そしてこの姿は彼らの「一致団結」を表現しているのだとか。
左からパヤオ王国のカムムアン王、チェンマイ王朝のマンラーイ王、スコータイ王国のラームカムヘーン王。
彼らがチェンマイを作り上げた3人、らしい。
「1(ヌーン)、2(ソーン)、3(サーム)、チェンマイ!」 。
中華街やワローロット市場、ディープなモン族市場
バンコクの中華街と比べられないほど規模は小さいものの、チェンマイの新市街にもお約束程度に金行の目立つ街並みがある。
それは新市街東側、ピン川寄りの一角に現れる。
ちょうどチャングモイロードとウィチャヤノンロードの交点にその中心地と呼べるような賑わいがあり、その角を陣取る「達成豊大金行」はいかにもといった風情だ。
バスターミナルからバス、ソンテオでターペー門方面へ向かう際に通るピン川沿いのプライサニー通りからも赤々とした看板が目に入るはず。
この周辺には、トンラムヤイ市場やワローロット市場もあり、市民の生活用品から食料までなんでも揃うエリアとなっており、チャイナタウンの混沌を味わうことができる、旅行者にとっても彷徨う価値ありの一角。
トンラムヤイ市場とワローロット市場の間を走るウィチャヤノー通り。バンコクでは見ないサムロー(三輪タクシー)も街角で屯~♪
この辺一帯の路地をぶらぶら探索してみると面白い。
いわゆる中華街らしい赤々としたエリアはほんの一部、しかしこのエリアの路地には中国廊、寺院、小さな金行も見つけることができ、ささやかながら中国風情を感じることができる。
どかどかと派手じゃない、控えめな街並みがいい。
路地の探索を続けた。すると中華街の西側に山岳民族の一つ、モン族の市場に迷い込んだ。
静かな路地の所々にカラフルな工芸品の店。徐々に中華街の雰囲気が薄れ、新たなマイノリティー空間へと足を踏み入れている変化を楽しみつつ歩を進める。
すると明らかに密度の高い一角にたどり着いた。
そこは「バラック」とも「あばら家」とも言える簡素なテント作りの下に広がった空間。心惹かれるものがある。まるで不法占拠したかのように形成された小さな市場だった。
カラフルな民族衣装や財布、小物類に囲まれた小道に、果てしない迷路のような展開を期待した。どうか終わらないでくれ。
しかしその期待を裏切るかの如く小道はあっという間に途切れ、うす曇りの雨季の空の下へとすぐに放り出されてしまった。
高鳴るワクワクと儚さ。
途中の、小枝のように別れた小道も、その先伸びることなくすぐに行き止まった、、、。
しかしこれは圧巻だった。チェンマイの隠れたディープスポットと言えるだろう。街歩き好きには自信をもっておすすめできる。
余談だが、新市街の東側を流れるピン川、その対岸を走るチャルンラート通りとその周辺は、19世紀後半に商都として栄えた古い町並みが残っており、街歩きをするには恰好のエリアとなっている。
加えて、新市街の西側を走るニマンヘン通りはチェンマイの原宿とも代官山とも言われるようなおしゃれな観光スポットになっているようである。
時間に余裕があるのなら歩いてみるのもいい。
首長族の村やエレファントキャンプ
チェンマイの郊外にもいくつか見どころがある。
特に首長族の村やエレファントキャンプが目ぼしいスポットだろうか。
郊外へは旧市街でトゥクトゥクやソンテオをチャーターして向かうという方法もある。もちろん、地図を見ながらレンタルバイクで目指すこともできるが、交通事故には十分注意したい。
チャーターする場合、どこへ行くかによって当然値段も変わって来る。
半日で周るのか1日かけて見て周るのか、何人なのか、ドライバーと値段交渉をして決めなければならない。エレファントキャンプや首長族の村では入場料もかかって来る。
どこへ向かうにせよ、ガイドブックに載っているような場所ならドライバーも知っているはずなので、簡単な英語やタイ語で十分意思の疎通は図れるはずだ。
ただし、ドライバーによってはぼったくろうとしてくるだろうし、移動途中でぼったくり商品の店に連れて行かれるといった被害も報告されているようなので注意が必要。
旅慣れない方や余計なトラブルを事前に回避したい方は日本語ガイド付きの現地オプショナルツアーを利用するという選択肢もある。旧市街の仏教寺院観光と郊外観光がセットになっているツアーなどもあるので気になる方はチェックしてみて欲しい。
こうしたツアーに参加すれば安心して観光を楽しむことができるだろう。
チェンマイナイトバザールや旧市街のサンデイマーケット
チェンマイではナイトバザールも盛んだ。
新市街の東側、チャン・クラン通りにある3階建てのナイトバザールビルを中心にして周辺には工芸品や衣類の露店がひしめき合う。
ナイトバザールビル向かい側のカレー・ナイトバザールビルにはフードコートもあり、ここで夕食も楽しめる。
通り北側にはナイトプラザ、南側にはアヌサンマーケットと言う風にマーケット尽くしのチャン・クラン通り、一夜はこの通り沿いを彷徨ってみる必要がある。
毎週日曜日の夜には「サンデーマーケット」が開かれる。このマーケットは、毎晩開催されるチェンマイ・ナイトバザールより混沌とした面白さがある。
ターペー門から旧市街中心へと向かって伸びるラーチャダムヌーン通りは15時頃から深夜までの間歩行者天国に変わる。無数の露店が果てしなく並び、その隙間にもちゃかりと商人が売り物を広げる。
タイダンスやライブが披露されるステージがあるかと思えば、路上には盲目や手足のない名もなき演奏家たちの姿もちらほら。チェンマイへ行くなら日曜を目指し、ぜひとも体験してみてほしい。
余談だが、サンデーマーケットの最中に見る午後六時の国歌と人々の静止は壮観かつ異様な光景でもある。
まるで歩行者天国が石化してしまうかのよう。慣れればどうってことはない、しかし旅行者には珍奇な体験となるはず。
タイでは毎日朝8時と夕方6時に、公共施設、公園、テレビやラジオなどで国歌が流される。国歌が鳴り響いているうちは、道を歩く者、ベンチに腰を降ろしている者は、斉唱の義務こそないものの、直立不動の姿勢をとって国王や王室に対し敬意を表さなければならない。タイの不敬罪。寝ぼけ眼であわや。より
チェンマイの物価
チェンマイの物価はバンコクよりも安いと言われている。
今回、物価に関してはそれほど注意して見てこなかった。したがって残念ながらそれほど詳しい比較はできない。
しかし、料理の安さは自然と目に付き、強く印象に残った。
旧市街のいくつかのレストランや食堂は、バンコクに比べると10~20バーツほど安い値段設定をしている店が多い。特に私のような節約旅行者にはありがたい限りだ。
旧市街のとある食堂。一品45バーツほど。バンコクに比べ安い料理屋が多いのもチェンマイの大きな魅力だ。
タイのお土産を通販で買う
タイ旅行のお土産は日本から通販で買うこともできる。
通販で買えるのはお菓子や酒類、小物類などの定番商品が中心となり、職場や友人に無難なお土産を配るのに向いている。
現地から身軽に帰国したい場合や帰国後の買い忘れの補充にも最適。
タイのお土産通販サイトはこちらの記事を参考に。