タイ北部山間の町、パーイ。
もともとチェンマイとメーホーンソーンを結ぶバスの休憩地点として発展してきたパーイは、風光明媚なのんびりとした町。
「北のカオサン」や「バックパッカーの憩いの場」と呼ばれたり。その魅力に取りつかれて沈没する旅人も少なくない。
タイ映画『パーイ・イン・ラブ』の舞台となった影響から今ではタイ人にも人気の観光地になっている。
周辺にはリス族やラフ族などの山岳少数民族のほか、中国国民党残党の末裔が暮らす村もある。町から日帰りで行けるスポットが多く、トレッキングツアーも充実している。
北部最大の古都チェンマイからロットゥーで約3時間、二泊三日で十分観光を満喫できる。
時間に余裕があればチェンマイとセットで観光するのもいいだろう。
チェンマイからパーイへの行き方、町の様子から周辺の見どころまでレポートしていく。
チェンマイからロットゥーに揺られパーイへ
チェンマイのバスターミナル2、通称「アーケード」からパーイ行きのロットゥーが出ている。
所要約3時間、150バーツ、7~15時の間に10本ほど。
有名な観光地ゆえ、特にピークシーズンには混雑が予想されるため事前にチケットだけ予約しておくのが得策だろう。
片道72バーツのバスや150バーツの小型バスも日に数本出ているようだったのでバス好きの方はそちらへ。
ちなみに、バンコクのドンムアン国際空港からパーイ空港(パーイの町から北西へ1キロほど)への便も出ており、所要時間は1時間強と言ったところなので、旅のプランによっては空の便もありだ。
今回は王道とも言えるチェンマイからのロットゥーでの旅路を紹介する。
チェンマイからパーイへの旅路は多少の困難を極める。
というのは、くねくねと曲がりくねった山道を登っていくことになるため、酔いやすい人は酔い止めを用意しておいた方がいい。
この休憩ポイントからふたたび1時間半ほど山道を登って行くとようやくパーイの町にたどり着く。
小さなバスの発着場は町のメイン通りに面している。この辺りがパーイの中心地になる。
パーイの中心地と周辺エリアの観光
パーイの町は300メートルにも満たない四方の中にゲストハウスやレストランが密集している。したがって、町自体は小一時間もあれば歩いて周れるほどの小さなサイズだ。
町の右側を北から南にかすめるようにしてパーイ川が流れており、桟橋を渡った奥の森にはコテージのようなゲストハウスも点々としている。また川を越え中心部から少し離れた南東方面にもホテルやゲストハウスが点在している。
値段だが、バックパッカーから家族連れまで訪れる観光地ということで400円代の安宿から3万円以上するおしゃれなリゾートホテルのような宿まで幅広い。
バス乗り場のあるパーイのメイン通りにはレストランやトレッキングフィス、両替所などが軒を連ねている。
この通りでは夜市も開かれる。
夜になると露店が犇めき合い、旅行者たちで賑わいを見せる。町の中ではこの夜市が大きな見どころになる。
パーイの夜市
夕方辺りからポツポツと露店がで始める。バーベキューや寿司、雑貨やアクセサリー屋に路上芸人まで現れてる。歩行者天国となった通りは夜に向けて賑わいを深めて行く。
バーベキュー、一本40バーツほど。
イチゴ酒。パーイはイチゴの産地でもある。
今ではすっかり観光地化したパーイだが、もともとはヒッピーカルチャーとも深く関わりのある町だった。
その影響もあってか、現在ではクリエイターの集まる町としても有名で、夜市の露店には目を見張る雑貨やアクセサリーも多かった。
パーイ川を渡る
パーイ川を隔てた北側、繁みを切り開いた土地にもゲストハウスが隠れてる。自然の中で眠りたいならこのエリアがいいだろう。
少々頼りない桟橋を渡る。
川沿いの宿でせせらぎに包まれながら眠るのもいい。
レンタルバイクやツアーで周辺エリアの観光へ
パーイの町でのんびりだらだらと過ごすのも悪くないが、周辺にも見どころはたくさんある。
町からレンタルバイクでさくっと行ける距離には中国人村やパーイの町を一望できるプラタートメーイェン寺院。
エレファントキャンプやターパイ温泉公園、少数民族の村、パーイキャニアオン、モーペンの滝やナム・ロッド洞窟など他にも見どころはある。
ナム・ロッド洞窟は多少遠出になるし、トレッキングツアーに参加したり複数個所を回りたいのなら現地オフィスが提供するツアーに申し込むのが手っ取り早いだろう。
レンタルバイクは100~200バーツ/24hほど
パーイ周辺を自力で見て周る場合の定番の足がレンタルバイク。チェンマイでも多かったが、ここでもたくさんの旅行者がブンブンとやっていた。
ただし、毎日のように旅行者のバイク事故が起こっているという事なので、乗りなれない方は特に注意が必要だ。ちなみに、レンタル時に提出を求められることはないが、法的には国際免許証の保持が前提だ。
パーイの中国人村とその来歴
中国人村は方角で言うとパーイの西に位置する。町からバイクを走らせて10~15分ほどの距離になり、かなり手軽に行けるスポットである。
村は、手前が観光エリア、奥の斜面を上がるにつれて普通の民家エリアになっているようだった。
中国人村はツアー会社が提供するパッケージにも大抵含まれている。現地ツアーを利用する場合は運転手付きのロットゥーで訪れることになるだろう。
第二次世界大戦後、内戦により中国共産党に敗れた国民党軍は国を追われた。
蒋介石に率いられて台湾に逃れたのが残党の大部分であったが、中国南部の雲南省や四川省の部隊は行き場を失い当時のビルマ領であったシャン高原へ行き着く。
ところが1960年代に入ると今度はビルマ政府に追い出される形となり、タイ北部へ移動、麻薬取引を主な資金としつつ組織の維持を継続して来た。
1987年に武装解除に応じたのちタイ国籍を取得、国民党軍残党の末裔たちは中国の文化を継承しながら現在では平和に暮らしている。
そうした来歴を持つ村はタイ北部にいくつかあるわけだが、その一つがこの中国人村ということだった。
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村に入ってすぐ左手にレストランやお土産屋が集まっている。
そこは小さな丘のようになっていて、奥に少し見下ろす形で馬が草を食む小さな牧場が広がり、人工的に作られた小道が伸びる。周辺にやはり赤土の小屋が立ち並び、ここも観光客用のエリアのようだと分かる。
その奥の山並みの中にいよいよくすんだ色合いの民家群を認めることができる。
一部刈り取られた山肌から立ち上った煙の筋に暮らしの息遣いを見る。そのままぐるりと右方向へ目をやるとやはり民家の連なりが見える。どうやら村人本来の暮らしはそっちにあるようだ。
坂を上り奥の方まで行ってみるのも面白いだろう。
村の入り口からまっすぐに奥へと進むと徐々にリアルな集落の香りが濃くなっていく。
すれ違う村人。
オフシーズンの平日ということもあってか、観光客は疎らだった。賑わいというものを感じない。
写真には出てこないが、村の少し奥へ入った辺りにも中国式の楼閣のような建物がある。これが、いかにも中心的な風格で、下にレストランも控える。記念写真を撮るにはこの辺りが丁度よいだろうか。
その他の観光スポット
その他、パーイ周辺の観光スポットとしては、リス族やラフ族の村、パーイキャニオンやターパイ温泉公園、モーペンの滝、パーイの町を一望できる寺院「ワット・プラタート・メーイェン」などがある。
ちなみにパーイキャニオンはパーイの南方へ10キロほどだが、そこで望む夕日は非常に美しいと有名だ。
パーイから北東に約30分ほど行った山奥にはムーンビレッジという名の日本人村もある。ここは観光スポットというわけではなく、ただそこに日本人が暮らしているだけなのだが、旅行者が訪ねて行くことは可能になっているようだ。
少々遠出になるが、パーイから北へ50キロほど行ったミャンマー国境付近にはナム・ロッド洞窟もある。鍾乳洞を見てみたい方にはおすすめ。
今回、パーイでゆっくりと出来る日程ではなかったので周辺スポットで訪れたのは中国人村のみとなった。
必要日数についてだが、パーイの町を一通り味わい、パッケージツアーでさくっと周辺観光をするだけなら二泊三日ほどあれば十分だろうか。