レディーボーイに感動するバーウーマン
「パッポン2」通り、あるバーの前を通りかかると、バーガールに声をかけられた。
いや、ガールとは呼びずらい年頃、ウーマンとしておこう。
はなっから日本語で声を掛けられたから、日本人だと見抜かれていたようだ。タイでは韓国人か中国人と見られるのも茶飯事、それはそれで会話の取っ掛かりになるのだが、やはり自分の国籍通りに見られると一瞬だけ心がスキップする。
その中年女性は目に力があり、発するオーラにもどこか健やかさがあったせいか印象が良かった。
ここで一杯飲んでみることに。
「一人さみしいね~」「ハンサムねぇ~」
通りに面したカウンターでビールをオーダーすると他愛もない会話が始まった。声は大きく溌溂としていた。軽く強請られたので彼女にもビールを一杯ご馳走することに。
中国風のデザインを取り入れたらしいおしゃれな店は、パッポンの猥雑さの中にあっては健全に見えた。
メニューにはピザもあり、おしゃれな音楽が流れ、DJブースまである、普通にくつろげるタイプの店だった。
彼女いわく、オーナーはオーストラリア人、彼は幼少時代の一部を中国で過ごしており、幾ばくかの思い入れがここに反映されているらしい。
タニヤは日本人の街だが、ここパッポンはファラン(欧米人)オーナーが多いらしい。
彼女は少しの日本語を話すことができた。ほぼ毎日、ネットの日本語会話レッスンを受けてるという。
10年ほど前までお隣のリトルトーキョー「タニヤ」にあるレストランで働いていた。その後、パッポンへと移って来たのだとか。
タニヤにせよパッポンにせよ、そこで商売するなら簡単な日本語は身に付くわけだし今も語学の研磨に余念がないといったところだろうか。
彼女はタイ中部、ミャンマーとの国境付近の街メーソートの出身だという。
両親はミャンマーからの移民という話だから、彼女もミャンマー系タイ人ということになる。
こちらから聞かずとも、需要を察してか、パッポン界隈の事について色々とアドバイスをしてくる。
いわく、「マッサージ」とメニュー表片手に言い寄って来る男らが多いが、奴らに付いていくとインド系のマッサージ店に連れて行かれるのだとか。
「安いけどダーティーね、やめた方いいヨ。あと、太ってるよぉ~」
たしかにインド女性は多少ふくよかなイメージアはあるが、そこは好みの問題。ポイントは「ダーティー」という点にあり、とにかく衛生面の欠如を強調していた。
安い分、衛生管理がお座成りだということだろう。
そこへ対比させるかのように彼女が進めて来たのが「日本のソープランドね」。
スリウォン通り、ここから5分ほど歩いた所に若くてかわいい娘を揃えたマッサジパーラ―があるらしい。
衛生面についても「きれい、きれいね、ダイジョブ」と確信しているようだが、その比較対象は飽くまで先ほどのインド系マッサージであることは付け加えておく。
目の前にはゴーゴーバーがある。確か名前はKing’s Corner2とか言ったはず。
「全部オカマ、レディーボーイだよ」。
店の前で客引きする女性たちは私でも見抜けるようなレディーボーイたちばかり。
どこかごつごつした体つき、顔の輪郭、その声音に明々白々でそれと分かる。
しかし、店内で踊っているダンサーも「100パーセントレディーボーイ」だと豪語する彼女。
そんな極端な店があるのかと初めこそ半信半疑だったが、そういえばバンコクの一大風俗街ナナプラザにあるレディーボーイ専門のゴーゴーバーを思い出して半ば納得した。
ちなみに系列店、近くにあるキングスコーナー1という店には正真のレディーとレディーボーイの半々が在籍していているという。
もしそちらの趣味がないのなら、違いを見抜く目を持ち合わせない客には非常にリスキーな店舗となる。
女だと思っていたら男だった、なんて話もタイでは珍しくないからだ。
「アレッ!見て見て、レディーボーイよ!」
店を出て、二人して歩いて来た男女を指しては興奮気味の彼女。
上背のあるメガネの、赤いナップサックを背負った中年男は日本人のようだった。隣には白と黒のチェックのワンピースでボディーラインが強調された色白のかわいい女の娘、、、。
彼女が男だとは驚かされる。
10メートルほど離れているものの、ここから見る限りどう見ても女だ。自分は見分けられると自負していた部分があったが、その自信も彼女の美貌に崩壊寸前だ。
なにやら立ち止まった二人。バーウーマンは目を凝らしてまじまじと再度確認するが「100パーセント」そうだと言う。
余計なお世話だが、はたしてあの男性はその事実に気付いているのだろうか。二人は再びシーロム通りの方へと歩き始めた。これからホテルに連れ込むのだろう。
「レディーボーイ目当ての日本人多いよ」
「え!?」
とこの時は少々驚いたが、まあ、考えてみれば当然、需要があるから供給しているに過ぎない。
ところでどうやって行為に及ぶのか。
そんな素朴な疑問が頭を擡げたが、この時は取り合えず胸の中に押しやった。
時折立ち上がって彼女はカウンターの前まで出て来て、通りの客に声をかける。
しばらくして、欧米人と思しきカップルを捕まえてカウンターへ上手に座らせた。
ビールが届くと、向こうの客引きレディーボーイたちの美貌への感動を英語で熱弁し始める。
「信じられる?あれ男なんだよ!」
「私の腕より彼女たち方が細くて綺麗!」
客の彼女に冗談交じりにそう言えば「私の腕もぷよぷよ」と二の腕の肉をつまんで相手方も返したりする。
一方、彼の方は笑顔で会話に居ながらも、どこか様子がおかしい。
辺りで飛び交う女たちの嬌声、淫らな繁華街、いや、風俗街の雰囲気に、ともすると目が爛々とし始めているようにも見える。
それを鋭く感知したのか、彼女の笑顔の中に緊迫したものが見え隠れする。
そして、興奮を冷ますように、しきりに彼の背中を撫でているじゃないか。顔を見つめ、なだめるように、背中をするするとさすっている。
彼女は彼の中のオオカミの目覚めが心配なのだろうか。
まずもって、こんな所にのこのこと来るもんじゃないよ、カップルで。と、そんな風に思うのは私だけだろうか。
まあ、この程度のバーならわかる。ここパッポンにはゴーゴーバーなどの風俗店も多いが、この界隈は旅行者が健全な夜を過ごすことができる繁華街でもある。
たまに見かける理解しがたい光景は、ゴーゴーバーにやって来るカップルたちの姿だ。
しかも、大抵は気まずそうに、しんみりと、難しい顔して半裸のダンサーたちの動きを眺めている。なんでこんなところにカップルで来るのだろうかと、毎回疑問だ。
別の日本人らしきおじさんが、女性としか思えない女を連れ立ってキングスコーナー2から出て来た。
「あのレディーボーイきれい、あの娘好きなのわたし!」
いちファンらしい彼女が悶える。どうやら彼女の中にはお気に入りのレディーボーイリストが存在するらしい。
「え?あれもレディーボーイなの!?」
愚問だった。レディーボーイ専門のゴーゴーバーから出て来たのだからそうに違いないわけだが、そんな愚問が口を突いしまうほど凄かった。
その二人、今度は反対のスリウォン通りの方へと消えてった。
「メイク見た?あのきれいな顔!」
「ま、まあ、みたよ」
一連の彼女の言動から、どうやら彼女自身、レディーボーイたちの美貌に痛く感動している様子が伺える。
それは好奇の対象であり、しばしば彼女を感化させているようだった。ちなみに彼女自身は列記とした女性のようだが。
その体格や、見てよ見てよと言わんばかりのモデル歩き。これで、大抵はレディーボーイとすぐ分かる。
整形や豊胸、女性ホルモンの投与などの傍から見れば時に痛々しいほどの努力が、皮肉にもお里をバラしてしまうことも多い。
もともとが男性ホルモンの多い猛々しい男だったのだろう、いくら頑張っても根底に残ったオスの香りの抗えない漏洩に、お里が割れてしまう者も少なくない。
しかし中には、そうした壁を見事に克服した「完全体」もいる。
彼女たちは男の要素をほぼ完全に取り除き、その上絶妙なさじ加減で女らしさを纏っている。
女だと思っていたのが、ふとした隙にチューニングを誤ったらしく漏れた「だみ声」に背筋が凍りつく体験をしたことがあるが、完全体はそういったレベルのさらに上を行く精密さを体現しているというわけで、私のような者が見分けられると思うのは自惚れも甚だしい。
例のスリウォン通りのマッサージパーラーを紹介してくれる、と彼女が言う。
それに加え、すぐそこの空中ガラス張りのゴーゴーバー「ブラックパゴダ」もここのオーナーが経営しているらしい。
「見たい?紹介する、見るだけタダよ」
私はガラス張りのブラックパゴダを見上げた。そこは以前から気になっていた店だった。
「見るだけタダ」、、、。
タイの夜の繁華街ではよく聞くセリフだった。
仮にただじゃなくてもいい、もともと覗いてみるつもりだったので、これを機に入ってみよう。
会計を済ませ、彼女について怪しい階段を上がった。
空中ゴーゴーバー「ブラックパゴダ」
空中の、ガラス張りの箱の内側で、ダンサーが躯体をくねくねと淫らに動かす。
地上を歩く旅行者をハンドライトで照らしては注意を引いて誘惑する。
「見るだけタダ」と連れてこられたわけだが、席に着くや否やメニュー表をかざしてくる。
まあ、一杯くらいは、、、。それで110バーツのシンハーをオーダー、ぐびぐびとやりながら店内を観察していく。
21時を過ぎたばかり、まだ早いためか客は疎ら。
ソファーに厳つい黒人のお客、その隣のジーンズの女は連れかそれとも店のダンサーなのか。
背中や腕にタトゥーが入っていて褐色の肌、タイ人のような面立ちで、ライムを齧らせたりしていちゃついている。数日、数週間単位で買われた嬢が客を連れて店に遊びに来たパターンだろうか。
反対のソファーには初老の白人のおやじがいて、隣には若い嬢がついている。
事前情報では中年のダンサーが多いという情報も見かけたが、決してそんなことはなかった。むしろ若くて粒ぞろいという印象さえ受ける。
真正面のダンサーは、色白でぽっちゃり、目つきの鋭い気が強そう。何度か目が合うものの、直感的にお互い興味なし。
その娘の股の間から、さっきまで飲んでいたバーのネオンの竜が吠えている。ここは空中ガラス張りのバーでガラス越しに下のパッポン2通りが見える。
上へ繋がる階段から降りてきた白人の二人組、うち一人に手をつかまれたダンサーが店の奥の方へて行った。
見ているとどうやら、奥に部屋も完備されているようで即ことに及ぶことが可能になっている様子。
中国系らしいキャップの男がきて先の黒人の隣に座る。
東南アジア系、おそらくタイ人男性が入店、私のすぐ右隣に座った。金髪で歯を矯正中の女を指名してコーラのようなのを奢った。175バーツほどするらしい。
すぐにいちゃつき始めて、しばらくすると奥の薄暗場所にあるソファーへ移った。
見ていると、女が男に跨った。展開が早い。膝の上に乗った状態でさらにいちゃつきが深化する。さらに飲み物を奢ったのか、女が膝の上でワイをした。
日本人か韓国人らしきが入店し、空いた右隣に座った。
先の中国系のキャップの男も、その男も、すぐに女を付けていちゃつき始めた。連れ出しても良いが、ムラムラしたところで奥の部屋へ入りすっきりして退店ていくというスタイルもありのようだ。
頭上にはガラス床、上の階にはポールがうっすら見えるが人の気配はない。ママさんぽい女に上に行ってみたいというと、ばってんマークでダメと断られる。なぜだろう?
目の前には褐色の二人の女たちが踊っている。ままさんが「どっちか選べ」というように催促のサインを出してくる。
誰もがペアになっている周囲の状況も手伝って、そろそろ潮時かと、会計を頼み店を出た。
まだ早い時間だからか、思っていたよりおとなしい店だったが、夜が更けるいつれ激しさを増していくのだろう。
キングスキャッスル2で笑いを堪える。
22時前、入店して左側の席に着いた。ステージでは黄色い水着姿でリズムを取っているダンサーたち。
ちょうどスピーカーの真上の席で、振動が体に響いて落ち着かない。右側にするりと除けてポジションを整え、LEOビールを飲む。
何人かと目があったり、合わなかったり。それほど目ぼしい娘もいなそうだなんて考えていると、一人、じっとこちらを見つめる嬢の姿。
それも、熱い、非常に熱い視線だ。
年の頃、20代中ごろだろうか。特に反応することもなく時たま視線をやるだけ。
が、向こうのアピールが止まず、むしろエスカレートする一方。しかも一風変わったやり方で。
両隣の娘に順に指さしてから「それとも私?」みたいなおふざけをかましてくる。まったく恥じらう様子もなく平然とおちゃらけている。
(なんだあいつは、、、。馬鹿なのか?)
が、それで、不覚にも表情が緩んでしまう。
するとここぞとばかりに益々エスカレート。(まずい、ツボが疼きだしている。)
ゴーゴ―嬢の中に一人だけ女芸人が混じって目一杯ふざけているかのような光景に体の奥から可笑しさが沸々と湧き上がって来る。
そっぽを向いて平常を取り戻そうと試みる。(その後、彼女はどうなった?)
矛盾する好奇心からしばらくしてまた見やると、なんとその娘、リズムに乗りながら時折コマネチしているではないか。
挙句の果てには、コマネチにヒゲダンスも交えてくるというサービス振り。
(北野と志村の両使い、何なんだあいつは?!)
完全にツボにはまり、お手上げだ、笑顔を見せてしまった。
これではいかん、まずいと視線をそらし、しばし明後日の方を見てやり過ごす。
ところが黄色い水着のコマネチとヒゲダンスの残像が頭から離れない。
あの南国風らしいゆっくりとした優雅なコマネチの動き、、、。込み合ったステージ上で動きを制限された中でのヒゲダンス、、、。
緩む口元を締めては緩み、閉めては緩みの繰り返し。笑ってもなんの罰もないはずだが、笑いが止まらなくなりそうで必死に落ち着きを取り戻そうと四苦八苦。
何とか理性を取り戻し、もう見ないようにして、一路トイレへ。中にいたおしぼり渡し、肩をももうとするおじちゃんのチップ要求を断り、席へもどる。
ステージを降りたコマネチがするすると近寄ってきて、座っていいかときくので、諦めて一杯ごちそうすることに。
前歯を矯正中の、イサーン娘、ぜんぜんかわいくないけどもうそんなことはどうでもよい、あのコマネチとヒゲダンスは一生忘れないかもしれない。
「あなたがシリアスな顔してたから笑わせようと思ったの」
通常、無駄に笑わない質、夜町でも一定の警戒心を保つように努めているが、彼女はそれをシリアスと言った。
この店に入り努めてシリアスな顔をしていれば、コマネチとヒゲダンスに会えるかもしれない。
KING’S CASTLE1
ちなみに、すぐ隣にはKING’S CCASTLE 1がある。
こちらの方が目ぼしい娘も多く、客も入っていた。パッポンではかなりの人気店のよう。
入店早々、三人の嬢が近寄ってきて、ドリンクをねだられるが断った。
ビールを飲みながら眺めていると、フロアスタッフのおばちゃんが目の前に来てなにやらごそごそと始める。
100バーツをかざす。マジックでも始めるのかと身構えると、札を上から下に落とすから、落ちる前に指でキャッチしろという。
何があっても金は払わんよ、と頭の片隅でつぶやきつつ、乗ってみる。
運動神経は良い方だと自負するが、多少の酔いのせいか、先ほどのコマネチの後遺症か、思いのほか難しく三回やっても全くつかめない。
と、次におばちゃんがやるというんで俺が落とすといとも簡単に一発でつかむ。
それで案の定、掌をすっと出して
「100バーツ頂戴」
分かっていたが要求され、そしてもちろんお断り。
ピンクパンサー
日本人を中心にアジア系のお客が目立っていた。
割と早い時間に入店してもそれほど目ぼしい子はいなかったが、再度遅い時間に入ると今度は逆にあぶれてしまった。
23時を過ぎるとムエタイショーが始まる。中央に設けられた簡易のリングの上で、恰好だけの試合が始まった。
この頃になると、席はすでにくっ付いたペアやはべらかしの客で埋まり、あぶれた客は見向きもされない。
結果的に「ゴーゴーバーにムエタイを見に来た形」となってしまった。
隣の客が出て行った。残された嬢と会話が始まった。
ところが常連と思しき日本人客が現れて空いた席に着くと、他の嬢と三人でそっちへ付いてしまった。
左側のテーブルには、こっちはこっちで同じようなことが起きていて、両端で複数の嬢をはべらかす日本人に挟まれる形に。
ママさんやフロアレディーの視界にも、私は全く入ってない様だった。
完全に乗り遅れた感。
入店も遅かったし、冷やかし気分ではあったとはいえ、あまりいい気分のしない短い滞在時間の末に退店した。
Night&Wings
とあるレストランのおじちゃんボーイと多少話が弾み、紹介された風俗店。
ここのオーナーとは顔見知りで一定の信用が置けるらしく「安いしきれいよ!」と太鼓判を押す。
じつはここ、夕方当てもなくぶらついていた時視界に入り、気になっていた店だった。
和食料理店やレストランの並びに一軒だけ、店先に夜の女が屯している怪しい店構え。木のベンチにはいかにもな女たちが4~5人座っていた。
そこにいた気だるそうなオーナーと一言二言交わしたおじちゃんは「じゃあとがんばってねぇ~」と手を振って戻っていった。
カーテンでふさがれた入り口を中に入ると、店内はちょうど日本で言うところのスナックのような構え。
初老のタイ人紳士が奏でるアコースティックギターとその歌声が店内に響き渡り、どこか昭和を感じさせ、淫らな香りはそれほど強くない。
脇にはカラオケの出来そうな設備もある。
一瞬、ここはただのスナックではないかと錯覚させられる。
テーブル席に着くと、いかにも調子の悪そうなオーナーが、力を振り絞ってオーダーを取りに来る。
小さなメニュー表には料金が見当たらず、ビールの銘柄だけが載っている。LEOを頼んだ。
ビールが届いたころ、店の外にいた女たちがぞろぞろと店内へやってきて、目の前にずらりと並ぶ。
胸にはお約束の番号札を付けている。まだ早いせいか総勢6人、それほど光る嬢もいない。
小柄な子が強烈にアピールしてきたが、気が強そうでなんだか気が引ける。脇にいた背の高い、もう少し明るい雰囲気の嬢を選び脇へつける。
褐色の肌にてっきりイサーン出身かと思いきや、チェンマイから来たという。日本語は勉強中で少しだけ出来る。
コーラのようなドリンクをオーダーし、たわいもない会話、さっそく左太ももを撫でてくる。
当然だが、やはりそういう店なのだ。
店のシステムは、いう間でもなく、気に入った子を連れ出して朝まで一緒にいれる、というやつ。
「マッサージ、アサマデゼンブ、ヤスイ、ヤスイヨ」
徐々にアピールが熱を増してゆく。
「今日は飲むだけ」
なんどもそういって聞かせた。
オーナーが時折テーブルへ来て、どうだ?どうだ?と早く商品購入の成約を取りたい様子。
値段は一晩で3000バーツ、ぬっと顔を近づけて小声で誘う。
まだわからないと濁すと、2500バーツまで一気に下がった。つまり交渉次第ではもう少し下がるかもしれない。
おじちゃんボーイも「タニヤはねぇ、高いよ、安全だけど高い」と言っていたように、この値段ならタニヤよりもだいぶ安く遊べる。
ドリンクの料金が少々気がかりではあるが、、、。
嬢は相変わらず、太もも、腕を撫でつつ、手を握り、背中をもんで来たりする。確かにマッサージは気持ちよさそうだ。
しばらくして、金髪の若い日本人が眼鏡姿のやけにあか抜けたキャッチらしきタイ男と入店した。左前のテーブルに着いた。
どうやら店の説明を受けている様子、しっかりマージンも入るのだろう。
路上で見るキャッチとは違い、レストランのボーイかなにかに見えなくもない。
私やこの日本人のように、周辺レストランにも紹介網が敷かれているのかもしれない。
男は、さっきの小柄な嬢を迷わず選び席に着かせ、ビールを飲みながら煙草をふかす。そしてものの10分もしないうちに支払いを済ませる。
嬢は一端店の多くへと消えると、私服姿で戻って来た。
私の隣の嬢と二言三言交わし
「彼女をペイバーしなよ!」
そんな風のおせっかいを捨て台詞に、二人店を出て行った。
私とは違う、まともな客だ。その模様に、少し焦る自分がいたが、知ったこっちゃない。
ビールがなくなるころ、またオーナーがやってきて、もう一本?と尋ねるが、支払いを頼む。
ダメ押しとばかりに、ペイバーの催促を受けるも、「今日は見るだけ」と変わらぬ意志を伝える。
伝票にはなんと600バーツ。(高い!)。
これは果たしてドリンクたった二つ分の料金なのか、それとも1時間飲み放題とかでその料金なのか。
僅か15分ほどの滞在、かなり高いと思ったが、この時はペイバーしないことへのちょっとした罪悪感からか内訳を聞きそびれ、素直に払ってしまった。
こういう点、ほんと良くないなぁと思う。
そもそも、初めにドリンクの値段を尋ねるべきだったが、不覚だった。
いずれにせよ、交渉後のペイバー料金も含め、タニヤのカラオケ店で遊ぶよりは安上がりだろう。
やけに気に入られたのだろうか、その嬢は最後まで「携帯オシエテ」と粘っていた。教えたところで仕方がないので教えなかったが。
店を出てパッポン方面へと戻った。
まだ9時前の入店だった。もう少し遅い時間に行くと、嬢の数も増えているかもしれない。
JCマッサージ
パッポン界隈では数少ないマッサージパーラーとの話も聞くJCマッサージを覗きに行く。
ちなみにタイのマッサージパーラとは日本で言うところのソープランドのようなサービスを提供する風俗店のことだ。
前述のパッポンのバーウーマンはこの店の事を「きれいヨ!(衛生面)」と太鼓判を押し、レストランのおじちゃんボーイは「ダメ、汚いヨォ~!」と眉を顰めた。
パッポンから歩いて数分、「スリウォンセンター」と呼ばれる窪地の一番奥にある。
周辺には健全そうなマッサージ屋、店の前ではマッサージ師の女性達が夕食を取っていた。
(気まずい、、、)。
その前をしれ~っと通り過ぎてタイのソープへ入店。
システムはよくあるマッサージパーラーと同じだった。
ただし、ここは金魚鉢と呼ばれるガラス張りがない。
敷居のようなものはなく、奥の椅子やソファーに嬢たちが座っている。
この時6人ほどがいただろうか。30代と思しき女性たちが目立ち、ぽっちゃりした子が多い。
フロアーには客がいなかった。ボーイにシステムを一応尋ねるとなにやら紙切れを見せてくる。
「S:2500 V:3000」
とある。
この時いた嬢たちの胸の番号札にはどれもVという文字があった。つまり、みな3000バーツということになる。左側半分の席はがら空きだが、あそこがSの座り場なのだろうか。
「ずいぶんすくないですね」
ボーイにそう言うと二階を指差して「ファッキン」とぶっきら棒な説明。
なるほど、S達は上で仕事中ということか。
もうここで店を出ても良かったが、折角なのでハイネケンを頼みソファーに着く。
中央の柱で左端の嬢が隠れてしまったが、選ぶ気もないので別段問題ない。その柱には薄型テレビが付いていて、ドラマかバラエティーがやっているのか、ほとんどの嬢が釘付け状態。
申し訳程度に、時折こちらに視線を流す嬢が2~3人。残りは完全にテレビに夢中でこちらには一瞥もくれない。
佳境か、それともハプニングか、みな一斉にワアッと目を見開いたりする。この辺りのグダグダな感じも、なんだかタイ人らしい、といったら失礼だろか。まあ、6人全員から見つめられても
それはそれで困るのでちょうどよい。
ハイネケンを半分飲み終えた頃、脇の扉から30代くらいの日本人が嬢と出て来た。その嬢は、もしやレディーボーイかと思うような風貌だった。
ボーイが男性に「グッド?」と聞く。
その男は目を見開き少々オーバー気味に無言で親指を立てて答えた。
それで店内がなんとなく和やかな空気に包まれた。そして彼は去っていった。
嬢がそのまま前の席に着いた。よく見ると、レディーボーイではなく、どうやら本物の女性のようだったが、ちょっと厳つく気の強そうな雰囲気はそのままだった。
「日本語勉強してる娘がいるよ」と言って、ボーイが何人かの嬢を指差す。やはり、日本人客はお得意様らしい。
チェンマイなど北部出身者が半分、残りの半分はイサーン出身者だという。まあ、この辺りはどこも似たような状況だろう。
ハイネケンは一本120バーツ。飲み干して店を出た。
スリウォン通り。廃墟と化した「マッサージパーラー」も、、、。
場末の連れ出し可能キャバクラバー
JCマッサージのあるスリウォンセンターという窪地の入り口に、キャッチがいて話かけられる。
「もう終わったのかい?」
「ああ、見るだけ、飲むだけだから、、、」
そういうとやはり、じゃあ安い店を紹介するという。
もう、行く当てがなくなってしまった、が、まだ夜は浅い。
騙されるつもりでこのキャッチについて行ってみようか、そんな考えが浮かぶ。
はじめ「セックスショー」とやらをしきりに勧めてきたこの男。
「それには興味がないや」
すると別の連れ出し系のバーを紹介するという。
みな口を揃えるのは「タニヤタカイ」だからもっと安い店お紹介する、という切り口。
たしかに、タニヤは高いが、嬢のレベルやサービス、安全性などを考えると、妥当なのかもしれない。
安い店はやはり、あらゆる面で質が落ちると考えるのが無難だろう。
しかし、まあ、まだ見ぬ風俗店へ、付いて行くことにした。
いわゆるキャッチと呼ばれる者についていくのはこれが初めてだった。
タニヤ界隈のキャッチについていくとぼられるという噂はちらほら目にするし、いかにも人相の悪い者が多いのも事実。
ここはタニヤから少し離れている。それに経験上「許容範囲の人相」だったので、付いて行ってみることに。
「ノムダケOKだろ?」と当たり前のことをきくと「イエスイエス」、さっきは600バーツも取られたことを話すとそんなことはないという。
嘘でもイエスというに決まっているわけだが。
行き方を忘れないように、目ぼしい建物を記憶しながら歩くこと10分、質素な灯りに包まれた一軒のドアを入る。
閑散とした店内、30過ぎと思しき嬢が二、三人ソファーに埋まっていた。
入り口付近の席に着くとキャッチの彼も冴えない店内の様子に苦笑い。まあいいや、一杯だけ飲んだら帰ろう。
メニュー表、すべてのドリンクが一律200バーツとある。白いワイシャツのボーイにジャックダニエルのコーラ割をオーダー。
ちびちび飲みながら店内を見まわす、時間は10時ころだろうか、もう繁盛してもいいころだが、客は私だけ。褐色の若い嬢が入店し若干空気が軽くなったが、そのあとが続かない、店の奥の
スペースに嬢たちがやる気なさそうにダラダラしている。
時折キャッチや店員に連れられて客が入って来るが、店内の様子を見てすぐに「また後で来るよ」とか言い残して出て行ってしまう。
店の広さの割にこの状況は痛い。壁に架けられた薄型テレビがMIBが流れていて、キャッチの彼はしばし見入るが、しばらくすると店の外へ出て行った。
この店のボーイと若い女性が外から入って来て、店の奥に案内されている様子。なにやら「新人」が店にやって来たことが直感的に察知できた。
通りすがりにチラとみた分には、既存の嬢よりははるかによい印象。
しばらくしてキャッチが椅子に戻ってきて、今日から働き始める学生だってよ、席に付けるか?と聞かれ、やはり新人かと、そこで付けてみることに。
いま着替えてるからもう少し待ってとのこと。立て続けにワイシャツのボーイも現れ、「今日から働き始める、学生、学費稼ぐ、いい娘」のようなことを告げていく。
薄暗くて良く分からなかったが、新人の子は、どうやらミニスカートに着替えて来たみたいで、不慣れに隣に座った。容姿はそこそこ美人、夜の匂いがしない、健全な学生といった出で立ち。
ボーイが一緒についてきて、
「英語、日本語デキル」
そのような情報を伝える。
アユタヤーから来たらしいその子は学生で、学費を稼ぐためにここで働くのだという。
日本語が出来るということは、アユタヤーのリトル東京で日本人相手の夜の商売でもしていたのかと思い、以前は何をしていたのかと尋ねると、何もしていない、という。
日本語は本を読んで勉強したのだとか。
年は二十歳。初日と言う緊張や未知の世界の勝手のわからなさもあってだろうが、その他にも、なんとなくプライドの高さのようなものが感じ取れ、しっくりくる感じではない。
笑顔や愛想に乏しい。
英語も日本語もそこそこ。コミュニケーションはぎりぎり成り立つ程度。向こうから話しかけてくることは少なく、テレビのドラマを見つつ、たまにこちろの様子を伺う。
独身か彼女がいるかなど、申し訳程度に聞いてきて、こちらも彼氏はいるのかという質問をなんとなくするといないという。
白いワイシャツのボーイにペイバー料を尋ねておいた。
ペイバー料金は個人差もあるはずだがロングでキャッチへのマージンも含めだいたい3800バーツほど。
キャッチなしの自力入店ならマージンは避けられるだろうし、さらに交渉次第で値下げは可能とのこと。
自分のホテルに連れて行くことも交渉次第なのかもしれないが、専属のトゥクトゥクで五分ほどの所にゲストハウスがある。
トゥクトゥク代は100バーツほど。
ドリンクは一杯200バーツ、嬢のドリンクは250バーツ。酒を飲み過ぎず、うまく交渉すれば、ロングでも4000バーツ弱に収まるのではないか。
飲んだ分のレシートは一枚一枚テーブルに重ねていくので明瞭だが、会計の際ボーイが暗算でミスしたりするので、きちんと電卓などを使わせて目の前で計算させた方がよいかもしれない。
ぼろうとしているのか、単に間抜けなのかその辺りは分かり兼ねた、、、。
パッポン界隈マップ
ホテル予約
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