( デモ隊と警官隊が衝突したという場所、2014年2月26日撮影)
今、バンコクに滞在している。
前回のブログ記事でもお伝えしたとおり、私は今、2ヶ月間のタイの旅の途中。
しばらく更新が滞ってしまった。
デモの話
心配していたバンコク各地で行われていた反政府デモ。
3月3日にバンコク封鎖終了宣言があり、一部デモ隊を残し撤収した模様。
現在デモ隊はルンピニ公園という所一箇所に統合されているようだ。
今は、バンコクにいても大丈夫そう、そんな雰囲気である。
到着当初、こちらで出会った何人かのタイ人達。
ある者は「デモのそばに行かなければ大丈夫だ」
ある者は「デモは長期化、激化するだろうからバンコクを離れた方がいいかもしれないよ」
あるトゥクトゥクの運転手は
「俺は来週には地元のイサーン(東北地方) に逃げるよ」
当初は、まずバンコク入りした後でやはり危険と判断すれば、
早々とチェンマイにでも移ろうと考えていた。
しかし、近くでデモ隊と警官隊の衝突があったカオサンロードには、
減少傾向にあるとはいえ依然旅行者がリラックスムードで闊歩していた。
その光景が、デモにさえ近寄らなければ大丈夫という判断を後押した。
観光地化した現場
衝突現場後を見に行った。
歩行者のみがを通り抜けできるようにした半分封鎖状態の現場は
むしろ観光地化していてた。
私も、黄色い柵を通り抜け、デジカメ片手に足を踏み入れた。
入口付近に、迷彩服の若い軍人が数人配置されていた。
表情は硬く、目は鋭かった。
しかし、目と指の合図で許可を取りカメラを向けると、
照れと笑みで表情が緩んだ。
私は心の中では(どーもーっす)、実際には「コープンクラップ」、
両手を合わせてつもより深々と礼をした。
白人の旅行者やタイ人たちが横転したボロボロの車やトラックの脇を歩いて見て回る。
謹んだ顔もあれば、笑顔も見える。
そして、カメラやスマホでパシャパシャやる。
私は、横転したした車にちかづくのを躊躇した。
なんか怖かったのだ。
広々とした道路の中央に出て行けば、
近くの雑居ビルの窓からいるはずのない狙撃手に狙われそうで。
そんな妄想がついつい働いて、しばらく歩道側の木陰から眺めていた。
歩道側には、日常の生活が戻り始めていた。
屋台が香ばしい煙を立て、ランチのOL やビジネスマンの姿もある。
警官隊との衝突で亡くなったらしいおばさんの血だらけの写真が、
ビルの壁際に貼ってあった。
その周辺には花などの供え物がしてある。
写真をよく見ると、まさに目の前の段差の所で亡くなったことに気がつく。
床に目を凝らすと、赤黒い血痕が残っているのが知れ、思わず後ずさった。
独特の死生観、「死体」の考え方
あまりの生々しさに立ち尽くしていると、
OLとビジネスマンの男が現れ、血痕と花々の前で、
記念写真をスマホでパシャリ。
これには驚いた。
確かに私も死体があったらしい現場を写真に撮ったが、
記念撮影の体で取ろうとは思わない。
もちろん彼らを批判したいわけではなく、
なにか違う感覚をもっているような気がするのだ。
「死体はエキサイティング」?
死体や死に対する捉え方が、この国の人々は少し独特だ。
タイでは、テレビや新聞などに死体の写真が露出されることがある。
こっちで知り合ったジャーナリストのタイ人の男は
「需要があるから報道する」と言っていた。
インフォメーションセンターで知り合った巨漢「プー」は
「死体はエキサイティング」とニコニコ顔で言った。
バンコクには「死体博物館」なるものや、
最近は規制が厳しくなってめっきり数が減ったらしいが
死体の写真を専門に扱う雑誌もあるみたいで、
やはり、感覚が大分違い、興味深い。
私は、道路の中央に寄った。
フロントガラスの砕け散ったワゴンや前輪のパンクしたショベルカーには
スプレーのタイ文字、サイドミラーには花輪が垂れ下がる。
道路の中央の国王の肖像画だけが、
何事もなかったかのようにいつも通り屹立していた。
のどかなデモ隊キャンプ地
小さな橋を渡り、近くのデモ隊のキャンプ地にも入った。
そのときデモ隊は別の場所に移動していたようで、閑散、のどかだった。
人気のない無数のテントが地にへばりつき、洗面用具、衣類などがよく目に付く。
少しの人が巨大スクリーンに映る激しいデモ行進をのんびり眺め、
幼児は裸足でペタペタ遊び回り、
デモグッツの売り子は日陰に寝転び新聞を読みふけっていた。
私は今ルンピニ園から少し離れたゲストハウスに泊まっている。
公園内の様子は、他の会場もそうであったように、「お祭り」みたいらしい。
私は見に行っていない。
2、3日前、園内のベンチで休憩していた親政府系の市民が、
反政府系の警備隊に監禁リンチされた挙句、川に捨てられるという事件があったと、
ネットで見たりもする。
私が同じ目に合うとは思わないが、なんだか物騒で、
無闇に近づこうとはあまり思わない。
その男は、運良く救出され、病院で治療を受けているらしい。
私は今回海外旅行保険に入らずに来た。
クレジットカードの契約も、海外旅行中の保険に対応しているのかどうか未確認だ。
出来るだけ安全に過ごしたい。