タイ ニューハーフ 夜遊び

美女と野獣が棲む体。タイのニューハーフ(レディーボーイ)。

投稿日:2014年12月14日 更新日:

 

タイ王国は東南アジア諸国の中でもLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)に高い理解を示す国です。いぜん、差別や偏見は残っているようだけれど、タイに数日いれば日本との違いを感じるはず。我々マジョリティーの身近で暮らしているし、おおむね社会に包含されていように映る。

日本では「ニューハーフ」、タイでは「レディーボーイ」と呼ばれ、海外では後者が一般的で、「LGBT」ではTの「トランスジェンダー」という括りに入る。タイの旅の間にゲイの方々とよく接触したものだが、ニューハーフの方たちも頻繁にお見かけした。

その数の多さに旅行者はみな「タイはニューハーフ天国だ」と口そろえる。美貌、凄み、迫力に驚き、時に翻弄されながらも、彼女らに注がれる好奇の視線が絶えることはない。ちなみに女性から男性になった方はトムボーイという。

 

女性を凌駕する美貌

タイレディーボーイ(圧縮)

タイで一番のニューハーフ美女を決めるミスティファニーズユニバース2014年の勝者。世界大会「ミス・インターナショナル・クイーン2014」では堂々の二位に輝いた。出典:タイランドハイパーリンクス

 「タイのニューハーフは美人揃い」というイメージがあるのは私だけではないと思う。これはもはや風物詩といってもいい。

パタヤ市にあるニューハーフ・シアター、Tiffany’s Show Pattaya Co.,Ltd.が主催する「ミス・インターナショナル・クイーン」は米国のMiss Queen of Universeと並んで有名だ。

世界一の美を競い合うこの大会は2004年に始まっており、2014年までの間にタイ勢は3回の優勝を誇っている。これは歴代最多の成績である。

開催国としての土地の利を考慮しても、この結果に沿うならばやはり世界屈指の美しさを誇ると言って差し支えないだろう。

そして、そうした美のレベルの高さの背景の一つとして、ニューハーフ人口が多いこと上げられると思う。

ある英国研究者によると、タイの全人口に対する彼女たちの人口比率は約0.3%であると推計されている。全体の人口が約6千700万人ほどであり、約200万人以上がニューハーフと言う事になる。

この200万人という数字がはたして他国に比して多いのかどうかはさだかではないが、少なくとも滞在中に受ける実感としてかなり多い印象を受ける。

ちなみにはるな愛さんも同大会で2009年に優勝し世界一美しいニューハーフの称号を手にしたようだ。

はるな愛

2009年、世界一美しいニューハーフに輝いたタレントのはるな愛さん。 photo by https://www.youtube.com/watch?v=cafgiIPIrXo

なぜレディボーイが多い?

「石を投げればレディーボーイに当たる」と表したくなるほどに彼女たちの姿は都市に溢れている。「多い」という前提で、それはなぜなのか、広まっている説をまとめてみたい。

  • タイの家庭では父親よりも母親の方が強く、母親の背中を見て育つ子が多いため、女性への憧れが強くなる。だから男の子も女性に憧れを抱きやすくなり、その結果レディーボーイになりやすい。
  • 田舎の貧困家庭では、男の子に生まれても「女の方が稼げる」という理由から女のように育て上げられることがあり、いつしか女になる。
  • 徴兵免除のためにレディーボーイになる。
  • 卵と鶏の議論になるが、性転換技術の発達が増加に拍車をかけている。
  • タイは仏教国であり、男と女の「中間者」に対して寛容であるため、わりかし堂々と生きていける環境がある。
  • 「マイペンライ(気にしない、大丈夫)」な国民性や社会的雰囲気のため、隠れる必要なく生きていける。

もちろん、複数の要素が絡まり、重なり合うことで性的マイノリティーに優しい社会風土になっていることは言うまでもない。

文化人類学者の綾部恒雄氏によれば、タイは男女の分業があまり明確に見られない国であると言う。この辺りは伝統的な日本の男女のスタイルと真逆にあると言える。そしてこうしたタイ独特の環境も、男と女の垣根をスカスカにしているのかもしれない。

徴兵制「くじ引き」会場に現れるニューハーフ

タイでは徴兵制が敷かれており、男性は21歳に達すると同時に徴兵検査に参加しなければならない。中でも、2年間の「青春」を謳歌するのか、それとも「徴兵生活」に放りこまれるのかが決定する「くじ引き」の光景は毎年悲喜こもごもとなっている。

徴兵制をくじ引きによって決めるというのがなんともタイらしい気がしてならないのであるが、免れた者は歓喜し、不運にも「当たり」を引いてしまったものは絶望の淵に。特に海軍の厳しさは有名であり、当選者の中には失神するものも続出するほどだ。

なかば「お祭り」模様の会場には、ニューハーフの姿も散見されるというのが常。毎年、徴兵検査参加者のうちの約1%がそうだと言う。

上半身裸の男たちに紛れて、戸籍上は「男性」の綺麗な女性達がうれしそうにしていたり、恥ずかしそうにしながら座っている。これは、「裸の女性達に囲まれた少数の男性たち」という状況に置き換えてみると非常に羨ましい限りである。

ちなみに彼女たちが徴兵に駆り出されることはまずあり得ないという。男たちの過酷な軍隊生活に女性が選出されるはずはないわけだが、法律上は依然として男である彼らは通常、「身体が兵役規定に不適合」という理由から兵役を免除される。

容姿が女性に近い人に対しては「共同生活で周囲の男性に悪影響を与える」といった理由で兵役が免除される。会場では医師によって直接、ニューハーフかどうか検査を受けることになる。

レディーボーイ(ニューハーフ)とは普通、男性から女性に性転換した人のことを呼ぶようだ。ならば、彼らの股間の「モノ」はというと、すでに切除済みのはずである。

ところが中にはモノをぶら下げたままレディーボーイライフを送っている人もいるというのが現実である。でなければ「ベッドで裸になった時に初めて気が付き慌てて逃げた」という恐怖のエピソードは成り立たない。

徴兵免除の判断にはこうした彼らの「股間事情」も大きく影響してくるような気がするのだが、じっさいのところはどうなのであろうか。

いまだに「モノ」が健在で、しかも過酷な軍隊生活に耐えうる肉体を持った「自称」レディーボーイだとすれば、もし私が選ぶ側ならばぜひ貴重な戦力として軍にスカウトしたいものだがどうなのだろう。

そういった「屈強な」ニューハーフをタイで何度か見かけたものだが、彼女らは徴兵免除に失敗しないのだろうか。

2012年以降は、彼女たちは「性同一障害」として兵役を免除されることになった。しかしそれ以前は「精神障害」というかなり的外れな診断によって兵役を免除されていた。

こうした「精神的な病気」という診断が、のちの就職にまで悪影響を生んだ事例が頻発したことが性同一障害という呼び方に繋がったと言われている。個人的には、いずれの表現も同じく「障害」という言葉を用いている点になんとなく釈然としないものがあるのだが、、、。

「なぜニューハーフが多い?」でも述べた通り、この徴兵制を免れるためにわざわざニューハーフに転身するタイ人男性も少なくないのではないかという説もある。

そういった転身はあくまで一時的なものなのか、それともそれを機にずっと女として生きてゆくことになるのだろうか。

いずれにせよ、タイの男性たちのこうした転身には異様な柔軟さを感じざるを得ない。

ある在タイ日本人男性の分析

バンコクで現地採用として働く友人のMさんが、この様なタイ人男性の「転身」について非常に面白い分析をされていたのを思い出したのでここに記載させていただくことにする。

私の分析では、本当に心が女性なのはごく一部で、大体が「男性としての社会から期待される役割を放棄した人達」なんじゃないかという事です。

現に、「明日からオカマ辞めて男になります」と宣言し、実際に男性として生活を始めるようなケースがあるようですし。

日本人が反体制としてツッパリになるのに対し、タイ人はオカマになるのではないかと。

彼の「男性としての社会から期待される役割を放棄した人達」という分析を見た時に、日本の「草食系男子」や「週末だけ女装する男」たちの姿が頭に浮かんできた。なにか通ずるものがありそうな気がするのである。

この点に関してはまた別の機会にもう少し掘り下げて考えてみたいと思う。

 

世界初のキャビンアテンダント

はるな愛さんは言う。

「日本では(性転換者は)今も変わり者と思われがちで控えめな人が多い。広く受け入れられているタイでは社会で活躍する人も多い。そのタイで優勝できるなんてうれしいです」(朝日新聞2009年11月1日)

これは、彼女がミス・インターナショナル・クイーンに輝いた際に残した言葉だ。彼女がそう感じるのだから、タイが日本に比べて性転換者にオープンなことは間違いない。

2011年、タイの航空会社PCエアの国内線に世界で初めての「レディーボーイCA」が4名採用された。この業界は「第3の性」なら書類審査で落されてしまうのが普通の世界だ。そんな中、「レディーボーイに平等な就職チャンスを与える」という新たな試みであり、当然「宣伝効果を狙った企業戦略」も垣間見える。いずれにせよ、タイの社会風土ならではの事例といえる。

この4名の内の一人、Thanyarat Chirapatpakornさん(23)は2007年のミス・ティファニー・ユニバーースの優勝者であり、オペラ女優としても有名な方らしい。彼女は採用を受け「夢が叶った。プロフェッショナリズムを証明するために一生懸命働きたい」とバンコクポストの取材に答えている。

ladyboy flight attendant(圧縮)

世界初のレディボーイフライトアテンダントの面々は、100名を越える応募者から選ばれた容姿端麗な才女たち。おそらく一番右端の娘がミス・ティファニー・ユニバースだ。pic by Bangkok post

 国内で初の県会議員

2012年には、北部のナーン県において、タイで初めてレディーボーイの県議会議員が誕生した。みごと当選を果たしたナーン県出身(当時28)のヨンダラーさんは性転換も済ませており、性転換女性協会会長でもある。

当時の記事によると、彼女は宝飾品ビジネスを経営するかたわら、国立ラムカムヘン大学の社会学博士課程に在籍とのこと。

タイ社会にはまだ法的課題も残されている。たとえ性転換したとしても法的には男のままであり、同性愛婚が認められていないため「事実婚」も多い。彼女たちの取り組みがそういった状況を少しずつ改善させていくことを願いたい。

レディーボーイのCA採用が引き続き行われているかどうかも気がかりだ。更なる雇用が進まなければ、CAが彼女たちにとって本当に「開かれた業種」とは言えない。国際的な職業柄、タイ社会のみならず世界的な理解の浸透なしには雇用の機会も広がらない宗教的な面から見ても、まだまだ時間がかかりそうだ。

コスメ関連やサービス業界で働くレディーボーイたちは多い。その他にも幅広い業界に舞台が広がる一方で、いまだ彼女らの雇用に及び腰の企業もある。分野適正や、雇用主の価値観も多分に反映されてのことと思う。

前述のPCエアラインの上級役員は言う。「5スターホテルのフロントでレディボーイのスタッフを見たことがありますか?」「コスメ業界などはともかく、他のサービス部門でもいつでもすぐに歓迎されているわではない」

ニューファーフショー(圧縮) 活躍の場を得られるレディーボーイはまだまだ限られているのかもしれない。pic by John Shedrick

 

ハイヒールアタックに気をつけろ。彼女たちの内に棲む野獣

こうした背景や経済的理由からか、夜の世界で生きる者たちも少なくない。華やかな舞台で輝くショウダンサーもいれば、ゴーゴーガールや街角の立ちんぼのように売春で稼ぐものも多い。

貧困、観光立国、性産業の発展。互いに絡まり合う要素を背景に、性産業に就くニューハーフたちの姿はカラフルで強烈に目に焼きつく。タイの性産業自体が派手で開放的だが、白昼堂々と客を取ろうとする彼女たちの姿にはタイならではの凄みがある。

2014年8月、タイ東部のパタヤで客引きのニューハーフがアメリカ人男性を負傷さるという事件があった。アメリカ人男性は彼女の店の前を通りかかった際、誘いを断わって立ち去ろうとすると、ハイヒールの踵で殴りかかられ、顔面に15針縫うけがを負わされた。

この「ハイヒールアタック」による流血事件は、タイのニュースをチェックしていると頻繁に見かける。つまり、どうやらタイのニューハーフたちの間では基本的な攻撃スタイルとしてしっかりと定着しているようなのだ。

お客の男性やその妻にまで容赦なく鋭い突起を振りおろし顔面や頭部を裂傷させる事件は後を絶たず、そのような事件を目にする度に「またもや」と感慨すると同時に、タイのニューハーフ達の体の奥底で喉を鳴らす「野獣」の存在に改めて戦慄する。

パタヤのビーチロード沿いにはニューハーフの立ちんぼが多く、中にはしつこい誘いもある。違法行為だが罰金も安く効果は薄い。くだんの彼女がどのように男性に迫ったのかは不明だが、男性の断わり方が悪かったことが一因とも言われている。ニューハーフと観光客とのトラブルは頻繁に起きていて、この事件もそのうちの一つだ。source

私はバンコクのとあるニューハーフ専門のゴーゴーバーへ行ったことがある。もちろん、そちらの趣味はないし、店の前を通りかかったら半ば強引に引っ張られただけだ。一杯だけ飲んで立ち去ろうと軽い気持ちで席に着くと、気の強そうな娘が隣に付き、頼んでもいないのに私の額の汗を拭いてくれた。

気づかいは有難かったのだが、そのあと掌を出して「チップ100バーツ頂戴」と迫られた。ちなみに安宿なら130バーツで泊れる。130バーツくらいするコーラも奢ってあげていたし、額の汗は乾くのを待つ予定だった私の意に反したサービスには一バーツほども払う気はない。

断わり続けていくと向こうは値下げを開始したが私は「NO」を決め込み「マイシャーイ」とタイ語も入れながら断固でいるとついに彼女は罵声を浴びせ立ちあがり店の奥へと消えた。私は驚きと、あまりにひどい客への態度が可笑しくて店員のおばちゃんとニコニコと顔を見合わせてからトイレして店を出た。ちょっと怖かった。

プライドが高いと言われるタイ人への対応は慎重さを求められる。一度、あるタイ人女性を怒らせてしまい、取り乱し怒りを露わにする姿に民族的な違いを痛感した経験もある。

とりわけレディーボーイはもとが「ボーイ」のためか凶暴さを隠し持つ者も多い。表面上は社会に溶け込んでいるかに見えるても、実は軽蔑や偏見を敏感に感知し、心の奥に闇を抱えていたりする。デリカシーを欠いた発言や冷ややかな態度は憤激の火種となり、野獣の目を覚まさせてしまいかねない。

まあ、チップを断った程度でぷんぷんされたのでは、もうどうしようもないのだが。

このほかにも、夜の繁華街を歩いていると、路肩に屯するニューハーフにボディータッチされたり、時にはなかば強引に腕を掴まれたりすることがある。タイに旅行したことがある方なら心当たりのある体験だと思う。

当然、見ず知らずの人間の腕を掴んだり、馴れ馴れしくしてくるのは向こうであり、日本人の感覚からすると少々失礼であり、大人しい日本人だからと甘く見られているケースも少なくない。

ところがそうした時に、断わり方を誤ると向こうが気分を害したりして、急に態度が豹変したりするので厄介なのである。日本人の中にはそうした経験からタイのニューハーフたちにあまりよい印象を持っていない方もいる様である。

https://www.youtube.com/watch?v=hLZkMag6uWc

昼間から路肩に立つニューハーフのたち。彼女たちのハイヒールには履物以外の用途もあることを忘れてはいけない。

見分け方をレクチャー

よく言われてるタイのレディーボーイの特徴を集めたので、近々彼女たちと普通の女性を見分ける必要のある方はぜひとも参考にしてみて欲しい。

 

  • 歩き方が一般のタイ人女性に比べて上品さに欠ける。
  • 喉仏が出ている。
  • 声が太い
  • 一般のタイ人女性に比べて喋り方がソフト。
  • 背が高い傾向にある。(一度だけ2メーター近いレディボーイが二人で交差点を歩いているのを見たことがある)笑
  • 一般のタイ人女性に比べ服がセクシー、刺激的。
  • 手に血管が浮き出ている。また話す時は手を使って表現する傾向にある。
  • なぜかロングのストレートヘアが多い。
  • 手足が大きい
  • 臀部(おしり)が平たい

 

よっぽどの美人でなければおおかた見分けることができると思う。欧米男性から見るとアジアンレディーボーイは華奢でとても女らしいので見抜きづらいようだが、我々日本人にはもう少し難易度が低い。

それでも「ベッドで裸を見るまで気がつかなかった」「慌てて逃げた」という背筋の凍るエピソードもあるから、酔いと色気にくらくらしていれば最悪の事態にもなりかねない。むろん、その「最悪の事態」から未知の世界が開け、新たな喜びに出会うこともあるかもしれないが。

もし好きになったタイ人女性に「もしかして、、、」と不安を感じたら、レディーボーイNGの喫茶店へ誘ってみるのも一つの手らしい。

バンコクにはそういう喫茶店があり、大抵のレディーボーイたちは入店を嫌がるそうだ。むろん容姿に自信のあるレディボーイにはうまく機能しない場合もあるだろう。

「第三のトイレ」とニューハーフ大学

ニューハーフたちは堂々と女性トイレを使う場合が多い。初めの頃は「どちらのトイレに入るべきか」を深刻に悩んでいた方も多いのではないだろうか。性転換する前なんかは特に迷うのでは?

「学校のトイレ」にいじめの香りが漂うのは万国共通かもしれない。もし男用トイレにニューハーフが入ってきたら、悪ガキにからかわれ、苛めの原因となりかねない。

私も小学二年生の時、ウンコをしている最中に上から覗かれ言いふらされた経験がある。もし当時の私がレディーボーイだったとしたら、あのときの嫌がらせや屈辱は倍だったかもしれない。

バンコクのカンパング高校などのように、ユニセックス用のトイレを新たに設置する学校も増えてきている。2014年7月には、タイ北部チェンマイにあるランナー工科技術短期大学で「第三のトイレ」が新設された。日頃からいじめの対象になるという問題を解消するためだ。

マクロな視点で見れば第三の性にとても寛容なタイ社会だが、細部に目を凝らせば差別的な視線や言動に晒されることも少なくない。彼女たちは安心して用を足すことすらままならないこともある。

バンコクのスワンドゥシット大学はニューハーフのための学び舎だ。ここでは生徒たちがタイ独特のぴちぴちの制服を纏い自分らしくのびのびとキャンパスライフを送ることができる。

さすがはタイ王国と言いたい反面、裏を返せば依然として彼女たちの肩身が狭いのかもしれない。そして、ニューハーフしか入学できないのであれば、それは性的マジョリティーへの差別ともなりえる。非常に難しい部分である。

 

インタビューに「酒や煙草をやらない教育を受けた男性が好み」と語るとある生徒。ふむ、どうやら私には少々ハードルが高そうである。

 

「仏門」で男に戻る

幼いころからずっとニューハーフとして暮らして女を磨いていたが、仏門を機に性転換前に男へと立ち戻るケースもある。2014年5月4日のバンコクポスト(英字)が伝えた記事を自分なりに大雑把に要約してみる。source

ペッチャブリー県出身のナムナウくん(23)は7歳の頃から仏門するまでずっと自分を女として意識して暮らしてきた。思春期には化粧を始め、高校を卒業する頃の語尾は「クラップ」ではなく「カー」だった。※「カー」は女性が使う語尾。

性転換者のネットワークが増え、バーやレストランでキャバレーパフォーマーとして働いた。その後バンコクの大学へ入学し、大都会で刺激を受けながらホルモン注射や各種トリートメント、整形にもトライして女を磨いていた。

この間、母親が経済的にもサポートしたが、レディーボーイとなって以来父との関係は途絶えたままだ。大学ではチアリーダーをし「キュートゲイ&レディーボーイ」の大学のFACEBOOKページにもリストされた。後輩からは「お姉さん」と親われていた。

しかし両親の勧めで出家することに。2週間の仏門が終わればまたレディーボーイとしての人生を再開するつもりだった。儀式で得たお金を豊胸手術に回そうとすら考えていた。いずれにせよ、仏門すること自体は正しいことだという考えから参加を決意した。

ホルモン投与を中止して友人たちとの接触を避け女性ものの洋服もしまった。仏門の2日前、もっとも大切だった「女の命」である髪を切った。ホルモン投与をやめると男らしさが芽生えた。髭や体毛が増え、生まれて初めて「男」であることを意識した。

仏門が終わり、彼の姿を見た両親の幸せそうな顔を忘れられない。彼らを幸せにしたいと強く思った。特に父親は喜び、ゲイでもいいからそのまま男の姿でいてほしいと切望した。彼は父のために男の姿で生きていこうと決めた。ソーシャルメディアを介した非難や狂騒はいつしか賛辞や理解へと変わり、彼も自身の生き方に満足している。

美への切迫感や出費、世間の視線からも解放されたが、いまだに異性として魅力を感じるのは「男」だ。引き続きゲイやレディーボーイの友達とも仲良くしている。

彼にとって最も大きな出来事は父親との関係が改善したということだ。レディボーイとなってから仏門を終えるまではいっさい愛情を感じたことがなかったが、今では一緒にご飯を食べに行ったりと、人生で初めて父親の存在を強く感じている。

 

さて、容姿は男にもどったわけだが彼は「ゲイ」であり、決して私と同じ「男」になったわけではない。くわえてそこまでの経緯には親孝行や「父親との関係」が多分に影響している。

彼の「父親に認めてほしい、もっと愛されたい」という思いがニューハーフへの憧れを越えて彼を男の姿に変えた。当然ながら、女性ホルモンの投与を中止したことも、彼の思考の変化にかなり作用していることだろう。

父からの愛情への渇望と、ニューハーフの息子を受け入れ難い父の葛藤。こういうケースをつぶさに知っていくと、性転換を取り巻くストーリーも様々であるという思いが巡り始める。

 

・レディーボーイを男へ導く修業プログラムも行われている。 

 

性的マイノリティーたちにとっての障壁は、彼らを認めない宗教や伝統的な価値観を重んじる人々の理解獲得であろうか。

そんな中、タイ王国は彼女たちにとってかなり開かれた国であることは間違いない。

タイのゲイ事情。東南アジア一「ゲイ・フレンドリー」な国も読んでみて頂きたい。

 

 

-タイ, ニューハーフ, 夜遊び

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