一般的に海外の医療費は日本よりも高額だと言われているが、タイの医療事情はどうなっているのか。
タイ旅行で注意しなければならない病気を把握していても、旅行中に不慮の事故に遭ったり病気に罹るケースは十分に考えられるわけだが、タイの医療水準や必要となる治療費はいったいどれくらいなのだろうか。
かりに短期の旅行であっても、万が一に備え現地の医療事情をある程度把握しておくことは大事である。
海外旅行保険に加入する際の参考にもなる情報だと思うのでぜひ目を通しておいて欲しい。
タイの医療水準は高いが医療費も日本よりやや高め。また、支払い能力が無いと判断されれば治療を受けられない場合もある。
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タイの医療水準は都市部と地方の農村部やそれぞれの医療施設によって大きく違う。
首都バンコクやチェンマイなどの主要都市の公立基幹病院や主な私立病院のレベルは高く、とりわけバンコクの主要な私立病院であれば日本の医療レベルと比較してもまったく見劣りしないほど高い水準にある。
そうした病院では、日本で医療を学んだ医師や看護婦も働いており、また日本語通訳部や日本人専門外来が設置され、日本人受診者への医療態勢が整備されていることがほとんどである。
私立病院の場合、診察料や治療費等はそれぞれの病院が独自に定めており、全般的には日本よりも高額になっていると考えておかなければならない。
しかし、それでも例えば欧米諸国などに比べるとかなり安く、日本の医療費よりもやや高めな程度である。
これに対して公立病院の場合、質は落ちるものの治療費が割安になるため症状によってはうまく利用したいところだが、日本語通訳がいないなど一介の旅行者にとっては利用の難易度が高くなってしまうのは否めない。
さらに、公立病院では一般タイ人患者たちによる混雑も予想され、受診まで何時間も待たされるといったこともざらにあるようなので私立病院と比べるとだいぶ見劣りしてしまう。
治療費の例。盲腸手術の総費用は50万円以上
例えばタイ旅行中に盲腸になり、手術と2、3日の入院をした場合、治療費の総費用は約50万円ほどになる。
部位にもよると思うが、タイで骨折をした際の治療費は36500円以上かかると考えられ、日本なら15000円ほどなので倍以上という事になる。参考サイト
盲腸の場合、日本では入院費も含めて40万円ほどが相場だが、国民皆保険が7割負担してくれるため患者個人の負担は残りの3割、つまり10万円前後に留めることができる。
ここに関して、じつは、タイや海外においても「海外療養制度」を使えば現地で支払った治療費の一部を帰国後の申請後に払い戻すことができる。
これは非常に便利な制度ではあるものの、しかし安心して当てにできるほど万能ではないので注意が必要だ。
海外療養制度は飽くまで日本の治療費ベースで払い戻しされる
日本の国民皆保険は、海外でかかった治療費に対しては「海外療養制度」を設けることで治療費の一部を負担してくれる。
この海外療養制度とは、海外での急病やケガなどにより現地の医療機関を利用して発生した治療費の一部を帰国後の申請の後に海外療養費として払い戻してくれる制度である。
ただし、帰国後の払い戻しに関して一つ大きな注意点がある。
海外療養制度によって払い戻される治療費は、基本的に日本で同じ治療を受けた場合の治療費をベースにして算出された額の7割となっている。
厳密には、海外で支払った治療費の方が日本で同じ治療を受けた場合よりも安い場合を除いて、日本の治療費ベースで払い戻し額が計算されることになる。
仮にタイで盲腸になり50万円の治療費がかかったとすると、日本での盲腸の治療費の7割である約30万円が戻って来るものの、残りの20万円は自己負担となり、日本で盲腸にかかるよりも10万円ほど多い自己負担を強いられるというわけだ。
しかも、病状によっては日本との治療費からさらに大きな開きが生じる。患者の日本への移送や家族の救援費用などがかさむことにより、場合によっては数百万円の治療費が発生するといったケースも出て来ると言うわけだ。
海外旅行保険またはクレジットカードが無ければ治療を拒否されることも。
タイでは医療費を支払う能力がないと病院側に判断されれば、治療そのものを拒否される可能性もあるという。
これは場合によっては死活問題になる。
こうしたケースを回避するには、海外旅行保険に加入しいることを証明したり、クレジットカードを持参しておくといった手段が考えられる。
ちなみに、緊急時に現場で十分な現金を用意するのは至難の業であり、あまり現実的とは言えないだろう。
適切な海外旅行保険に加入していれば治療費を保険の補償額でカバーすることができる。
また、保険会社が提携する現地病院であれば、治療に必要な現金の持ち合わせが無くとも立て替え無しのキャッシュレス診療を受けることが可能になるのため、もしもの時も安心して病院を訪ねることができる。
保険会社の割高商品か、クレジットカード付帯の保険か。
海外へ渡航の際、海外旅行保険に加入するか否かはあくまで個人の問題だが、現地での余計な不安を抱えないためにも保険環境を整えておくのが賢明だろう。
海外旅行保険には保険会社が提供する割高の商品とクレジットカード付帯のものと大きく2つの種類が考えられる。
私の場合、タイで病院の世話になったことは幸いまだないのだが、タイの医療費がそれほど高くない点や30代という年齢、自身の良好な健康状態や予算を踏まえた上で、今の所はクレジットカード付帯の保険で賄うことにしている。
クレジットカード付帯の保険は新たに保険商品を購入する必要が無いため旅費の節約になる。
カードの年会費や保険が利用付帯の場合には多少の手間がかかるもののそれも微々たるもので、その割に保険の補償内容が充実しているものも多い。
例えば楽天プレミアムカードなどの海外旅行に最適なクレジットカードでは「キャッシュレス診療」サービスの付いた海外旅行保険付きのクレジットカードも多い。
補償内容に不足があると感じれば、第二、第三のクレジットカードを持つことで補償額を合算し、より大きな安心を得られている点も大きなメリットである。
ただし、滞在日数がクレカ付帯の保険の適用期限である90日を超える長期の場合や、なおも補償内容や額を不足に感じるのであれば、保険会社が提供する商品を検討してみるべきでしょう。