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HIVに感染したら治療費と自己負担額はいくらかかる?

投稿日:2017年3月24日 更新日:

 

 

 

現在では、HIVが「死の病」から「慢性的な感染症」になったと言われている。

 

世界のエイズ関連の死者数は年間160万人。

これはピークだった2005年から30%減少した数字である。

 

25歳のHIV感染者の平均余命がたったの7年だったのは1996年の話。

それが現在では約40年までに伸びている。

 

抗HIV薬が普及した今、早期発見と適切な治療により、HIV感染者の暮らしは非感染者のそれに限りなく近づいてきている。

 

 

そうは言うものの、両者の生活にはいくつかの面で違いがある。

 

特に、感染者の経済的な負担として気がかりなのが年間の治療費ではないだろうか。

 

これが払えないのでは死活問題になる。

 

 

この記事では、HIVの治療にかかる年間費用や、福祉制度の利用も含めた自己負担額についてまとめてみたい。

 

 

 

初診料金や治療が開始された場合の年間の治療費

 

 

 

 

 

HIVの治療は、免疫力やウイルスの状態を見ながら、治療が必要と判断された時点から開始される。

 

初診では症状の確認や治療方法の検討、医療費の確認や心理的な相談などが行われることになり、診察代は健康保険適用の3割負担で約1~2万円ほどと言われている。

 

2回目以降の診察では、症状の確認やCD4(免疫力を測る指標)の測定などが行われ、約6~7千円の診察代がかかる

 

 

月額約20万円?

 

 

経過を見て、いよいよ本格的な治療が開始された場合、抗HIV薬は全額自己負担する場合、月額約20万円かかると言われている。

年間にすると240万円の治療費がかかる計算になる。

 

健康保険制度を使えば3割負担になるので毎月約6万円の費用が掛かることになるが、その場合の年間治療費は約72万円という計算になり、これでもかなり大きな経済的負担を強いられることになる。

 

 

しかし、幸いなことに福祉制度を利用すれば治療費の自己負担額をさらに軽減させることができる。

 

 

 

身体障害者手帳を取得し、福祉制度を利用する

 

 

 

 

 

 

治療費の自己負担を軽減するために様々な福祉制度の利用が考えられる。

 

まず、HIV感染者は身体障害者手帳を申請することができる。

 

身体障害者手帳を取得すると福祉制度の恩恵を受けることができるようになる。

 

したがって、HIV感染が判明したら、まずは障害者手帳を申請して医療費自己負担を軽減するための福祉制度の利用を検討するのが一般的な流れになっている。

 

 

ちなみに参考までに身体障害者手帳というのは、

 

「身体障害者がそれを対象とする各種制度を利用する際に提示する手帳で、身体障害者が健常者と同等の生活を送るために最低限必要な援助を受けるための証明書に当たる。身体障害者手帳を省略して障害者手帳と呼ばれる場合もある。」wiki

 

というもの。

 

そして、ここにおいてHIV感染者は「免疫機能障害」に該当し、病気の状況に応じて障害者認定基準の1~4級までの等級で取得することができる。

 

 

それぞれの等級と該当する状況

 

 

 

1級 ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害により
日常生活がほとんど不可能なもの
2級 ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害により
日常生活が極度に制限されるもの
3級 ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害により
日常生活が著しく制限されるもの(社会での日常生活活動が著しく制限されるものを除く)
4級 ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害により
社会での日常生活活動が著しく制限されるもの

http://old.habatakifukushi.jp/hiv_medical_welfare/medical_treatment_welfare_system/techou.html

 

 

 

 

身体障害者手帳取得で可能になる助成や福祉サービス

 

 

どういった助成や福祉サービスをどれだけ受けられるかは、障害者手帳の等級や各自治体が提示する条件、また公的医療保険や社会保険への加入の有無によって異なってくる。

 

したがって、まずは個々でそれぞれの自治体に当たってみる必要がある。

 

 

主な助成の種類や福祉サービスの例を以下に挙げてみたいと思う。

 

 

 

助成では、

 

 

自立支援医療(更生医療)

 

重度障害者医療費助成制度

 

高額医療養費制度

 

 

 

などの利用が考えられる。

 

また、もし感染原因が血液製剤に起因したものである場合は、特定疾病医療費などさらなる助成の適用も考えられる。

 

 

 

福祉サービスでは、

 

 

税金の減税や免除

 

所得税、住民税、相続税の控除など。

 

 

日常生活の援助

 

福祉タクシー券の受給など。

 

 

公共料金の減額や免除

 

鉄道運賃、バス運賃の割引など。

 

 

 

さらに、もし病気のために仕事が出来なくなった場合には、傷病手当金の給付、生活保護などの利用も考えられ、その他にも各地方自治体ごとに諸手当が支給される場合がある。

 

 

場合によっては、助成や福祉サービスの条件が良い自治体に引っ越すという選択肢も出て来ることになるだろう。

 

 

 

 

 

結局自己負担はいくら?

 

 

ここまで述べて来た通り、病気の状況や自治体によって適用される制度は変わって来るため最終的な自己負担額にもまた差異が生じることになるが、

 

 

健康保険と障害者手帳取得による各支援制度を組み合わせることで、月々の自己負担額が無料~2万円程度に抑えられる

 

 

と考えておけばいいのではないだろうか。

 

いずれにせよ、HIV感染者が障害者手帳を取得し、諸制度を利用することによって、治療費の自己負担額はかなり軽減されるという点は強調しておきたい。

 

仮に月20万円の治療費も、健康保険適用の3割負担で医療費の自己負担額は月々6~7万円、さらに障害者手帳を取得、自立支援制度の適用で1万円までに抑えることができる、と、こんな具合になるだろうか。

 

治療費が月2万円かかるとしても、年間では24万円であり、これは支払い可能な現実的な額だと言える。

 

 

 

早期発見は医療経済的メリットも大きい

 

 

 

 

 

仮にHIV感染が発覚しても諸制度の恩恵を受けることで治療費を支払い可能な額にまで軽減させることが可能であるという事が分かった。

これはHIV感染者や、感染の疑いのある方の不安を緩和しうる重要な事実でもある。

 

しかし、忘れてはならないことは、自己負担が軽減されるという事は、つまり治療費が税金で賄われるということ。

その額が大きくなればなるほど国の財政を圧迫して行くことになるわけだ。

 

今回のケースで言えば、HIV感染者が増加すればするほどその流れに拍車が掛かるということになる。

 

 

HIV感染者は、感染を知らないまま過ごした場合、一生のうちに7人を感染させると言われている。

しかし、当然のことながら早期発見できれば感染者増加に歯止めがかかる。

そしてそもそも避妊具なのどを正しく着用することによってほぼ確実に感染を防ぐことができるウイルスでもある。

 

より多くの人が感染を予防し、また少しでも疑いのある場合はHIV検査を受ける。

その結果、感染そのものが減少する。

 

また、早期発見者が増えれば、非感染者に限りなく近い形で残りの人生に挑んでいけるという個人的なメリットのみならず、医療経済的にも大きな利点があると言えそうだ。

 

 

現在、日本は主要先進国中で唯一HIV感染者数が増加していると言われている。

その背景には、予防意識の低さや検査人口の低下という問題が横たわっている。

 

そんな中、最近ではHIVウィルスが強くなり、感染後わずか一年でエイズを発症するというケースも出てきているのだという。

 

エイズ発症後の治療ではさらに経済的負担が重くなることが予想される。

 

ますます早期発見が重要になる。

 

 

 

HIV検査の方法

 

 

 

現在、日本でHIV検査を受けようとすると3つの方法がある。

 

 

 

➡病院で検査(診察代、初診料などがかかり、性病に関わるなんだかの症状が出ていないと保険が適用されないこともある。全額自己負担の場合3000~7000円の設定が多い)

➡保健所で検査(無料、匿名で検査を受けることができる。対面で人と話さなければならず、結果は通知や郵送ではなく保健所での面談になる。検査可能日も少なめ)

➡検査キットで検査(匿名、自宅で検査ができ、結果はWEBで確認。)

 

 

 

無料、匿名で受けれる保健所での検査も便利だが、出向く時間を節約でき、匿名で受けれる検査キットも便利だ。

 

 

 

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